論文の図の著作権と許可申請|転載・改変・再利用の完全ガイド — Editverse Japan

論文の図の著作権と許可申請|転載・改変・再利用の完全ガイド

この記事のポイント

  • 出版済み論文の図には著作権があり、無断転載は著作権侵害になる
  • Creative Commonsライセンス(CC BY等)の図は条件付きで自由に再利用できる
  • Copyright Clearance Center(CCC)を通じて許可申請が効率的に行える
  • 出版社への直接申請では、申請から許可取得まで数週間かかる場合がある
  • 自分の図をFigshareやZenodoで公開すると再利用しやすい形で共有できる

学術論文を執筆する際、他の研究者が発表した図を引用・転載したいケースは珍しくありません。概念の説明、方法論の比較、自分の結果との対照——理由はさまざまです。しかし、出版された論文の図には著作権(copyright)が存在するため、適切な許可を得ずに使用することは、たとえ学術目的であっても著作権侵害になる可能性があります。

本記事では、論文の図を正しく使用するための著作権の基礎知識から、許可申請の具体的な手順まで、研究者が知っておくべきことをすべて解説します。出版品質の高い図の作り方や図の凡例の書き方とあわせて参考にしてください。

学術論文の図の著作権:基礎知識

多くの研究者が誤解しているのが「学術論文の図は引用すれば自由に使える」という考えです。これは誤りです。論文に掲載された図の著作権は、通常、出版社(パブリッシャー)に帰属します。著者が論文を投稿する際に、多くの場合「著作権譲渡契約(copyright transfer agreement)」に署名するためです。

オープンアクセス運動の発展に伴い、図の再利用に関するポリシーも大きく変化しています[1]。EQUATORネットワークを含む国際的な報告基準ガイドラインでも、他者の図の使用に際して適切なクレジット表記と許可取得が求められています[2]。

著作権の帰属先 典型的なケース 許可申請の必要性
出版社 Elsevier、Springer、Wiley等の商業出版社。著作権譲渡契約を締結 必要(CCCまたは出版社への直接申請)
著者(またはファンディング機関) オープンアクセス論文。著者が著作権を保持し、CCライセンスで公開 ライセンス条件に従えば許可不要(ただしクレジット必須)
米国政府 NIH、CDC等の米国政府機関が作成した著作物 原則として著作権なし(パブリックドメイン)
不明・連絡不可 著者や出版社に連絡できない古い文献 使用を避けるか、法的助言を求める
著作権処理でお困りではありませんか?
EditVerseの論文編集サービスでは、図の著作権確認から許可申請のサポートまで、出版プロセス全般にわたる専門的なアドバイスを提供しています。盗用・著作権侵害のリスクなく論文を完成させるために、専門チームにご相談ください。

Creative Commonsライセンスの種類と再利用可能範囲

Creative Commons(CC)ライセンスは、著作者が自分の著作物の再利用条件を明示するための標準化されたライセンス体系です。オープンアクセス論文の多くはCCライセンスで公開されており、条件を守ることで許可申請なしに再利用できます。PRISMA 2020など主要な報告ガイドラインも、オープンアクセスでCCライセンスにより公開されています[3]。

ライセンス種類 略称 商用利用 改変 条件 論文での使いやすさ
表示 CC BY 可 可 クレジット表記のみ ◎ 最も自由
表示-継承 CC BY-SA 可 可(同じライセンスで公開) クレジット+同一ライセンス ○ 改変後も同条件で
表示-非営利 CC BY-NC 不可 可 クレジット+非営利目的のみ ○ 学術目的は通常OK
表示-非営利-継承 CC BY-NC-SA 不可 可(同条件) クレジット+非営利+同一ライセンス ○ 条件多いが学術利用は可
表示-改変禁止 CC BY-ND 可 不可 改変せずにクレジット表記 △ 改変(翻訳等)は不可
表示-非営利-改変禁止 CC BY-NC-ND 不可 不可 非営利・改変なし・クレジット △ 最も制限が多い

重要:CCライセンスの図を再利用する場合でも、必ず元の著作者・出版社・ライセンス種類をクレジットとして明記する必要があります(CC BY等の「表示」条件)。

CCクレジット表記の正しい書き方

CCライセンスの図を再利用する際の標準的なクレジット表記形式は以下の通りです:

CCクレジット表記の例

形式:「[著者名]([発行年])[論文タイトル(短縮版)]. [ジャーナル名]. [DOI]. Licensed under [ライセンス種類] ([ライセンスURL]).」

例(日本語論文内での英語表記):
Figure adapted from Smith et al. (2023) “Effects of drug X on hepatic oxidative stress.” Journal of Pharmacology. https://doi.org/10.xxxx/xxxx. Licensed under CC BY 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/).

例(図の凡例内での日本語表記):
本図はSmith et al. (2023)(Journal of Pharmacology、DOI: 10.xxxx/xxxx)の図を一部改変。CC BY 4.0ライセンスに基づき転載。

Copyright Clearance Center(CCC)を通じた許可申請

CCライセンスが付いていない商業出版社の論文の図を使用する場合、Copyright Clearance Center(CCC)を通じて許可申請を行うことが最も効率的です。CCCは著作権管理の国際的な窓口として、Elsevier、Springer Nature、Wiley、Taylor & Francisなど主要な出版社の許諾業務を代行しています。

CCC申請の手順

  1. RightsLink(Webサービス)にアクセスする:多くの出版社のウェブサイトの各論文ページに「Request permission」または「Reprints and Permissions」のリンクがあり、CCCのRightsLinkシステムに連携しています
  2. 使用目的を選択する:「Journal/Magazine Article」→「Republishing in a Journal」→「Non-commercial academic use」など、使用目的を正確に選択します
  3. 使用詳細を入力する:転載先ジャーナル名、発行年、部数(電子版の場合はオンライン)、使用する図の番号を入力します
  4. 許可状(permission letter)を取得する:多くの場合、学術目的での非営利使用は無料で即時許可が下ります。商業使用の場合は費用が発生することがあります
  5. 許可状を保管する:取得した許可状はPDFで保存し、査読・校正時に提出できるよう準備します

CCC申請時に必要な情報のチェックリスト

  • 転載したい図が掲載された論文のDOI
  • 転載する図の番号(Figure 1など)
  • 自分の論文の投稿先ジャーナル名
  • 使用目的(学術論文への転載、教育目的など)
  • 配布部数(印刷版の場合)またはオンライン公開(電子版の場合)
  • 申請者の氏名・所属・メールアドレス

出版社への直接申請

CCCで対応していない出版社や、特殊な使用条件の場合は、出版社の著作権担当部署に直接メールで申請します。

申請メールに含めるべき情報:

  • 転載したい図が掲載された論文の完全な引用情報(著者、タイトル、ジャーナル、年、巻、ページ、DOI)
  • 転載する図の番号と説明
  • 使用目的と使用先(投稿予定ジャーナル名)
  • 改変の有無(改変する場合はどのように改変するか)
  • 配布形態(印刷部数、オンライン公開など)
  • 希望する回答期限

申請から許可取得まで、通常2〜4週間かかる場合があります。論文投稿前に余裕をもって申請することが重要です。また、盗用・著作権侵害の防止については、盗用(プラギアリズム)を防ぐ方法もあわせてご覧ください。

PLOS、BioMed Central等のオープンアクセス出版社のポリシー

オープンアクセス出版社の多くは、図の再利用をより積極的に認めています[1]。

出版社・プラットフォーム 標準ライセンス 図の再利用ポリシー 許可申請の必要性
PLOS(PLOS ONE等) CC BY 4.0 クレジット表記で自由に再利用可 不要(クレジット必須)
BioMed Central CC BY 4.0 クレジット表記で自由に再利用可 不要(クレジット必須)
eLife CC BY 4.0 クレジット表記で自由に再利用可 不要(クレジット必須)
PubMed Central(PMC) 論文による(多くはCC BY) 各論文のライセンスを確認 ライセンスによる
Elsevier(購読型) 著作権はElsevierに帰属 RightsLink(CCC)で申請 必要
Springer Nature 著作権はSpringerに帰属(OAはCC BY) RightsLinkまたは直接申請 購読版は必要、OAは不要

Figshare・Zenodoで自分の図を共有する

自分の研究で作成した図を他の研究者が再利用しやすい形で共有することも、オープンサイエンスの重要な実践です。FigshareやZenodoは、論文の図・データをDOI付きで公開できるプラットフォームです。

Figshareを使うメリット:

  • 図にDOIが付与され、独立した引用可能なオブジェクトになる
  • CC BYライセンスで公開することで再利用を促進できる
  • 論文投稿前にpreprintと合わせて公開できる
  • 高解像度の元ファイルをそのまま保存・共有できる
  • 多くのジャーナルがFigshare上のデータへのリンクを受け付けている

Wong(2011)の色覚に関する研究もNature Methodsに掲載されており、正確な引用と再利用の許可取得が重要なケーススタディです[4]。CONSORT 2010などの報告ガイドラインで示される図の標準化ともあわせ、図のシェアリングはオープンサイエンスの核心的な実践です[5]。

転載・改変・再利用:ケース別の対応一覧

使用ケース 推奨する対応 クレジット表記例
CC BY論文の図をそのまま転載 クレジット表記のみでOK Reprinted from [著者] et al., [ジャーナル], [年], CC BY 4.0.
CC BY論文の図を改変・修正して使用 改変した旨を明記してクレジット Adapted from [著者] et al., [ジャーナル], [年], CC BY 4.0.
商業出版社(購読型)の図を転載 CCCのRightsLinkまたは直接申請後に許可状取得 Reprinted with permission from [著者] et al., [ジャーナル], [年]. Copyright [年] [出版社名].
商業出版社の図を改変して使用 改変許可も含めて申請(通常は別途確認が必要) Adapted with permission from [著者] et al., [ジャーナル], [年]. Copyright [年] [出版社名].
自分が著者の既発表図を転載 著作権譲渡済みの場合は出版社の許可が必要 Previously published in [著者] et al., [ジャーナル], [年]. Reprinted with permission.
米国政府機関の図 基本的に許可不要(パブリックドメイン) Source: [機関名]. Public domain.

図の著作権侵害を防ぐための実践的な注意点

図の解像度とファイル形式の選び方とともに、著作権への配慮は図の管理において切り離せない問題です。以下に、著作権侵害を未然に防ぐための実践的なアドバイスをまとめます。

  • 論文執筆の早い段階から許可申請を開始する:申請から許可取得まで時間がかかるため、投稿2〜4週間前には申請を完了させる
  • 許可状はすべてPDFで保管する:編集者・査読者から提出を求められる場合があるため、必ず電子ファイルで保管する
  • 「educational use」「fair use」に過信しない:日本では著作権法第35条(学校教育目的)の例外があるが、商業ジャーナルへの投稿には適用されない場合が多い
  • 図のスクリーンショットの使用は避ける:PDFからのスクリーンショットは画質が低いうえに著作権侵害のリスクがある。必ず出版社から高解像度ファイルを入手する
  • 改変(翻訳・色変更・一部抽出)も許可が必要:元の図を「改変」する場合も、改変の許可を含めて申請する

論文の図表作成ガイドでは、自分でオリジナルの図を作成するための方法も解説しており、著作権問題を根本的に避けることができます。他者の図の再利用と自分でのオリジナル作成を場面に応じて使い分けることが、長期的に見て最も効率的な戦略です。

図の著作権処理を含む出版サポートが必要ですか?
EditVerseの出版サポートサービスでは、図の著作権確認から許可申請のアドバイス、適切なクレジット表記の確認まで、投稿準備全般をサポートしています。著作権の問題で論文提出が遅れる前に、専門家にご相談ください。国際ジャーナルへの投稿経験豊富なチームが丁寧に対応します。

図表作成サービス

論文図表作成

ジャーナル規格に準拠した高品質図表を作成。グラフ、フローダイアグラム、模式図まで対応。

¥14,800

論文図表作成の詳細・お申し込み →

まとめ

論文の図の著作権と許可申請は、多くの研究者にとって煩雑に感じられますが、適切な手順を踏むことで確実に対処できます。CC BYライセンスの図はクレジット表記で自由に使え、商業出版社の図はCCCのRightsLinkや直接申請で許可を取得し、自分の図はFigshareで共有する——この基本的なフローを理解するだけで、著作権問題の大部分は解決できます。

研究の誠実性と著作権への敬意は、学術コミュニティの信頼を支える基盤です。面倒に感じるかもしれませんが、一つひとつの許可申請が、あなた自身の研究成果が将来適切に扱われることにもつながります。

他の図をグラフィカルアブストラクトに使う場合の注意点は、グラフィカルアブストラクトに他の図を使う場合の注意もご覧ください。

参考文献

  1. Simera I, et al. A catalogue of reporting guidelines for health research. Eur J Clin Invest. 2010. PMID: 20055895
  2. Page MJ, et al. PRISMA 2020 statement. BMJ. 2021. PMID: 33782057
  3. Wong B. Color blindness. Nat Methods. 2011. PMID: 21774112
  4. Schulz KF, et al. CONSORT 2010. BMJ. 2010. PMID: 20332511

類似投稿

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です