症例報告の書き方|CARE声明の13項目と投稿までの手順 — Editverse Japan

症例報告の書き方|CARE声明の13項目と投稿までの手順

症例報告(ケースレポート)は、臨床医学の重要な知識源ですが、患者の個人情報保護という倫理的責任を伴います。CARE(CAse REport)声明は、症例報告の質と倫理的報告を保証する国際標準ガイドラインです。日本の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(2021年)とともに理解することが不可欠です。

CARE声明とは

CARE(症例報告)声明は、2013年にGagnier JJらによってJAMA誌に発表されました。13項目のチェックリストで構成され、症例報告の透明性・再現性・患者保護を同時に確保することを目的としています。単なる「珍しい症例の記録」から「臨床学習に資するエビデンス」へと症例報告を昇華させるガイドラインです。

CARE 2013 チェックリスト:13項目

項目番号 セクション 報告内容 倫理的意義
1 タイトル 「症例報告」という語を含む記述的タイトル 論文種別の透明な識別
2 キーワード 2〜5個のキーワード 検索可能性の確保
3 要旨 構造化要旨(導入・症例提示・結論) 主要情報の完全提示
4 はじめに 背景情報・文献的根拠・症例の意義 報告の科学的必要性の明示
5 患者情報 年齢・性別・民族・主訴(匿名化) プライバシー保護と再現性確保の両立
6 臨床所見 身体所見・重要な臨床所見 診断根拠の透明な提示
7 診断評価 検査・診断方法・困難点 診断プロセスの再現可能な記述
8 診断推論 鑑別診断と臨床推論過程 臨床判断の透明性
9 治療的介入 介入の種類・投与量・変更点 再現可能な治療記述
10 経過と転帰 経時的な臨床経過・患者評価 転帰の完全で正直な報告
11 考察 強みと制限、関連文献との比較、教訓 知見の適切な文脈化
12 患者の視点 患者が経験を共有する場合の記述 患者中心医療の実践
13 インフォームドコンセント 書面同意の取得確認 患者自律の尊重・法的要件への準拠

患者プライバシー:日本の法的要件

人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(2021年)

指針のガイダンスは、学会や専門誌での個別の症例報告を、研究目的でない医療の一環として「研究」に当たらないと判断してよい例に挙げています(第2⑴の解説)。ただし、投稿先や所属機関が審査・届出を求める場合や、多数例の比較など研究性がある場合は審査が必要です。詳しくは倫理審査が不要な研究とは:要否の判断基準と迷ったときの確認先をご覧ください。

個人情報の種類 匿名化要件 CAREでの対応
氏名・住所 完全匿名化必須 タイトル・本文から除外
生年月日 年齢(年代)で代替 「50代女性」等の表記
診断画像 特定可能な情報の削除 患者同意の書面取得必須
希少疾患 特定リスク評価が必要 倫理委員会への相談推奨

重要(日本の倫理要件): 日本では、症例報告においても「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)が適用されます。患者の書面によるインフォームドコンセントを取得し、施設の倫理委員会への相談を行うことが推奨されます。CARE項目13はこのインフォームドコンセントの報告を義務付けています。

インフォームドコンセントの記載方法

CARE声明では、患者のインフォームドコンセント取得を論文内に明示することを求めています。記載方法の例:

場面 推奨記載文例
患者生存時 「本症例報告の作成・発表について、患者本人から書面による同意を取得した。」
患者死亡時 「患者は死亡しているため、遺族代理人から書面による同意を取得した。」
同意不可時 「施設倫理委員会により同意免除が承認されている(承認番号:XXX)。」

著者資格とCAREガイドライン

症例報告の著者資格は、ICMJE基準に従う必要があります。著者資格と貢献度の決め方を参照し、症例の担当医・データ収集者・論文執筆者の貢献を適切に記載してください。

症例報告の統計的要素

単一症例の報告では統計解析は不要ですが、症例シリーズ(n≥5)では記述統計が必要となります。統計解析結果の報告を参照してください。

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CARE拡張版と関連ガイドライン

ガイドライン 対象 主な追加要件
CARE-AN 動物症例報告(獣医) 動物識別・飼育環境
SCARE 外科手術症例報告 術前評価・術中所見・合併症
CARE-SM スポーツ医学症例 競技レベル・傷害機序

参考文献と引用管理

症例報告の考察では、先行する症例報告との比較が不可欠です。参考文献の書き方を参照し、関連症例の文献を適切に引用してください。

他のEQUATORガイドラインとの関係

症例報告が蓄積してシリーズ(N=5以上)になると、観察研究の性質を持ち始めます。STROBE声明も参照しながら、適切な報告ガイドラインを選択してください。全体像はEQUATORネットワークのガイドライン総覧で確認できます。

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症例報告を投稿するまでの実務の流れ

CAREのチェックリストを満たすことに加えて、投稿までには次のような実務の確認が必要です。

  1. 報告する意義を一文で言えるようにする— その症例が、診断・治療・転帰のどの点で報告に値するのかを整理します。CAREのIntroductionで問われる内容です。
  2. 患者さんの同意と所属施設の手続きを確認する— 患者さんを特定しうる情報を公表する場合は、本人(または代諾者)の同意が必要です。ICMJEも同意の取得を求めています。倫理審査や院内手続きの要否は、所属施設の規程と投稿先の規程に従って確認してください。
  3. 経過を時系列で整理する— CAREは、受診から転帰までの経過をTimelineとして示すことを求めています。表や図にまとめておくと、本文の記述も整理しやすくなります。
  4. 投稿先の規程を確認する— 症例報告(Case Report)を掲載しないジャーナルもあります。掲載する論文種別、字数や図表数の制限、同意に関する提出書類を、投稿規程で確認します。
  5. 英文校正と報告ガイドラインの最終確認を行う— 医学用語の一貫性とCAREの各項目の充足を、投稿前に確認します。
  6. 共著者を確認して投稿する— 著者の範囲はICMJEの基準で判断します(上記「著者資格とCAREガイドライン」参照)。

執筆から投稿準備までを任せたい場合は症例報告作成支援(¥59,800)、書き上げた原稿のガイドライン準拠だけを確認したい場合は報告ガイドライン準拠確認(¥19,800)をご利用いただけます。いずれも見積もりのご依頼から承ります。

あわせて読みたい:投稿先の例:Internal Medicine(日本内科学会)の投稿規定と症例報告の扱い

よくある質問(FAQ)

Q: すべての症例報告で倫理委員会の承認が必要ですか?

A: 個別の症例報告は、ガイダンス上「研究」に当たらないと判断してよい例とされ、機関によっては倫理審査を原則不要としています。ただし投稿先が承認を求める場合や研究性がある場合は審査が必要で、手順は機関ごとに異なります。所属機関にご確認ください。患者さんの同意と個人情報の保護は別に必要です。

Q: 患者が同意しない場合、症例報告は発表できませんか?

A: 患者の同意が得られない場合は、(1)完全匿名化、(2)倫理委員会による同意免除の承認、(3)遺族代理人の同意などの選択肢があります。状況に応じて倫理委員会に相談してください。

関連サービス:症例報告作成支援

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