臨床研究法の対象・対象外|観察研究・後ろ向き研究はどうなる
診療の結果として得られた情報だけを使い、研究のために検査や投薬を決めない「いわゆる観察研究」(後ろ向き研究の多くが該当します)は、施行規則第2条第1号により臨床研究法の対象外で、倫理指針の側で扱われます。ただし、研究目的で心身に著しい負担のかかる検査を追加する場合は、観察的な研究でも対象になります。
この記事でわかること
- 臨床研究法でいう「臨床研究」と「特定臨床研究」の定義(条文の確認)
- 観察研究・後ろ向き研究が対象外となる理由と、対象になってしまう例外
- 厚生労働省のチェックリストに沿った判定フローと、公式事例への当てはめ
- 倫理指針の経路との違い、CRBと施設の倫理審査委員会の違い
- jRCTへの登録が求められる場合と、英文の倫理・登録記載の書き方
確認日:2026年10月11日 / 法的助言ではありません。
本記事は、2026年10月11日に実際に開いた法令データ(e-Gov)、厚生労働省、jRCT、認定臨床研究審査委員会申請・情報公開システム(jCRB)の公式ページだけに基づいています。条文の番号は、読んだ版で確認したものです。ご自身の研究がどれに当たるかの最終判断は、所属機関の倫理審査委員会・研究支援部門(必要に応じて認定臨床研究審査委員会)が行います。始める前にご相談ください。
本記事は、条文と厚生労働省の公式資料だけに基づいて、対象・対象外の分かれ目、認定臨床研究審査委員会(CRB)と施設の倫理審査委員会の違い、jRCTへの登録、英文での書き方を整理します。
あわせて読みたい:倫理審査が不要な研究はどれか(倫理指針の側の整理)、オプトアウト同意の書き方。
1. 結論:研究は3つに分けて考える
厚生労働省のQ&Aは、特定臨床研究以外の臨床研究を「非特定臨床研究」と呼んでいます[資料4]。この呼び方を借りると、研究は次の3つに分けられます。
| 区分 | どんな研究か | 臨床研究法との関係 |
|---|---|---|
| 特定臨床研究 | 臨床研究のうち、(a) 医薬品等の製造販売業者などから資金の提供を受け、その企業の医薬品等を使うもの、または (b) 未承認、もしくは適応外の医薬品等を使うもの | 臨床研究実施基準に従う義務があり、実施計画を厚生労働大臣に提出し、CRBの意見を聴きます(第4条第2項、第5条) |
| 臨床研究(非特定) | 臨床研究に当たるが、上の条件には当たらないもの | 臨床研究実施基準に従うことが努力義務です(第4条第1項、第21条) |
| 法の対象外 | 治験など別の法令の研究、医行為を伴わない研究、有効性・安全性を明らかにする目的でない研究、いわゆる観察研究など | 臨床研究法の対象ではなく、倫理指針などに従います |
「企業資金があれば特定臨床研究」と整理されることもありますが、条文では次の順に確認します。まず「臨床研究」に当たること(第2条第1項)が前提で、そのうえで企業資金の条件や未承認・適応外の条件が加わります(第2条第2項)。
2. 条文で確認する「臨床研究」と「特定臨床研究」
臨床研究法の条文は、e-Govの法令データで読めます[資料1]。筆者が読んだのは、2026年10月11日時点で現行とされている、令和8年5月1日施行の版です(令和7年法律第37号による改正を反映)。e-Govの改正履歴には、令和9年3月1日と令和9年5月20日に施行される版も載っていますが、本記事では扱いません。第2条を令和7年6月1日施行の版と比べたところ、違いは、引用している医薬品医療機器等法の項番号だけでした。
- 第2条第1項(臨床研究)。医薬品等を人に対して用いることにより、その有効性または安全性を明らかにする研究です。医薬品医療機器等法上の治験などは除かれます。一方で、医薬品等を診断・治療などに用いる場合に、有効性や安全性を明らかにするために追加で必要となる検査その他の行為(心身に著しい負担を与えるものとして省令で定めるもの)を行う研究は、含まれると定められています。
- 第2条第2項(特定臨床研究)。臨床研究のうち、第1号:医薬品等製造販売業者またはその特殊関係者から研究資金等の提供を受けて行うもの(その業者が製造販売する医薬品等を使うものに限る)、第2号:未承認の医薬品等を使うもの、または承認された範囲と異なる用法等(適応外)で使うもの(人の生命・健康への影響が同程度以下として省令で定める用法等を除く)。
- 第2条第3項(医薬品等)。医薬品(体外診断用医薬品を除く)、医療機器、再生医療等製品です。
- 第4条。特定臨床研究以外の臨床研究は、臨床研究実施基準に従って実施するよう努めること(第1項)。特定臨床研究は従わなければならない(第2項)。
- 第5条。特定臨床研究は、実施計画を厚生労働大臣に提出し(第1項)、実施計画に記載するCRBの意見を聴きます(第3項)。
- 第21条。特定臨床研究以外の臨床研究では、実施計画に準じた計画を作り、作成・変更の際にCRBの意見を聴くよう努め、同意・個人情報の保護・記録などについても準じて必要な措置を講じるよう努めます。
- 第22条。この章の規定は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律でいう再生医療等に当たる場合には適用されません。
公式の英訳(法務省の日本法令外国語訳データベース)では、法の名称は Clinical Trials Act (Act No. 16 of 2017)、「臨床研究」は clinical trials、「特定臨床研究」は specified clinical trials、「認定臨床研究審査委員会」は Certified Review Board と訳されています[資料11]。ただし、そこに表示されている最終反映版は令和4年法律第68号までです。英語で書くときの用語の参考にとどめ、現在の条文は日本語の原文でご確認ください。
3. 対象外になる研究:観察研究・後ろ向き研究
3-1. 「いわゆる観察研究」の定義
臨床研究法施行規則の第2条は、第2条第1項(臨床研究)から除かれる研究を挙げています[資料2]。第1号が、いわゆる観察研究です。研究の目的で検査・投薬などの医療行為の有無や程度を制御することなく、患者のために最も適切な医療を提供した結果として得られた診療情報や試料を利用する研究、という内容です。治験や製造販売後調査なども、同じ条の別の号で除かれています。
厚生労働省のQ&A(令和7年5月15日事務連絡)は、問1-12で、いわゆる観察研究は臨床研究法の対象に該当しないと答えています[資料4]。さらに言葉の意味を次のように補っています。
- 「制御することなく」とは、たとえば、患者の割付けや他の治療方法の選択を制約する行為や、研究を目的とした検査の追加を行わないこと。
- 「患者のために最も適切な医療を提供」とは、診療を担当する医師の判断で、個々の患者の病状に応じて医薬品の投与や検査などを行うこと。
- 「結果としての診療情報又は試料」とは、その診療の一環で行われた検査などで得られた情報や試料。
3-2. 後ろ向き研究はどうなるか
診療録(カルテ)から既存の診療情報を集めて解析する後ろ向き研究は、上の説明、つまり「研究のために医療行為を決めていない、診療の結果としての情報を使う」に当てはまることが多いと考えられます(これは条文と公式Q&Aに基づく筆者の整理で、個々の計画の判断は所属機関が行います)。大切なのは、前向きか後ろ向きかという時間の向きではなく、研究のために医療行為が決められたり追加されたりしていないかです。
厚生労働省のガイダンス(令和7年5月)も、法令上の「いわゆる観察研究」は、研究デザインとしての観察研究(observational study)と必ずしも一致しない、と述べています[資料7]。デザインの名前が「観察研究」でも、研究のために検査を追加するなどの介入があれば、別に検討が必要になります。
ガイダンスは、医薬品の投与は通常の医療として行い、研究目的でごく少量の採血を1回だけ追加する研究を例に挙げています。研究デザインとしては観察的でも、法令上の「いわゆる観察研究」に当たるかどうかは、直ちには判断しにくいとしています[資料7]。ガイダンスの経緯の説明によれば、法の対象は、研究目的で追加する検査等のうち「負担が大きいもの」に絞る基準へ移行しており、判断は次の3-3の「著しい負担」の考え方に沿って行います。研究目的の採血・穿刺・画像検査などを加える計画では、「自分の研究は観察研究だ」と決めずに、所属機関の倫理審査委員会・研究支援部門、必要に応じて認定臨床研究審査委員会に、早めに確認してください。
3-3. 観察的でも対象になる例外
Q&Aの問1-12は、研究の目的で穿刺を伴うなど、人の心身に著しい負担を与える検査等を診療に追加して行う場合は、検査等の介入行為が存在し、法の対象となる、と注意を促しています[資料4]。施行規則第2条の2は、「著しい負担」を、重大な疾病・障害・死亡・感染症などの安全性に関わる事象の発生頻度、または心身の苦痛・負担の程度が、通常行われる検査等と比べて相当程度高いと認められるもの、と定めています[資料2]。
ガイダンスによれば、令和6年法律第51号による改正で、医薬品等の使用は通常の医療の範囲内でも、研究目的で心身に著しい負担を与える検査等を行う場合は臨床研究法の対象であることが明確化されました。同じガイダンスは、判断の視点として、通常の検査等との比較(基準となる負担は集団ごとに異なる)、研究目的の検査と通常診療の検査を合算した負担、対象者の年齢・病状などの背景因子、を挙げ、具体例として、研究目的の脳血流PETの追加や筋生検の追加などを示しています[資料7]。
3-4. 迷いやすい点
- 試料やデータの保管・登録(レジストリ)。問1-13は、製薬企業等から資金提供を受けていても、特定の医薬品等の有効性・安全性を明らかにすることが目的でなく、将来の研究開発や疾病の解明に広く使うために生体試料を採取・保管する研究は、対象に該当しないとしています。ただし、その試料を使って医薬品等の有効性・安全性を明らかにしようとする研究を新たに始める場合、研究開始時点で既に採取・保管された試料を使う研究は臨床研究に該当しませんが、開始後に採取・保管した試料を使う研究は個別に判断が必要です。疾患登録システムの利用も同様の考え方とされています[資料4]。
- 対象外でも、利益相反は明らかにします。問1-12の注記は、法の対象とならない研究でも、利益相反の状況を結果の公表時に明確にすることが望ましい、としています[資料4]。書き方は利益相反の開示をご覧ください。
- 研究者が適用を選ぶことはできません。問1-22・1-23は、法や倫理指針の適用は研究者の意向で決まるものではなく、計画の内容が適用範囲に入るかで決まるとし、法の定義に合わない研究に法を適用することも、特定臨床研究に当たらない研究を特定臨床研究として実施することもできない、と答えています[資料4]。
後ろ向き研究の書き方そのものは後ろ向き研究の論文の書き方、報告ガイドラインはSTROBE声明で扱っています。
4. 判定フローと、公式事例への当てはめ
厚生労働省は、特定臨床研究の該当性を確認するチェックリスト-1を公開しています[資料6]。令和7年5月31日以降に開始(予定を含む)または実施中の研究に使うもので、迷うときは研究事務局、CRB、または厚生労働省医政局研究開発政策課に相談するよう記されています。次の図は、このチェックリストを簡略にして流れにしたものです。判定が実際にどこへ進むかを、厚生労働省の「臨床研究法の対象となる臨床研究等の事例集」(令和4年3月31日事務連絡、厚生労働省の臨床研究法のページに「対象範囲」の資料として掲載)の事例で確かめました[資料3、5]。

読み方:左上から順に「はい/いいえ」で進みます。右側の青灰色の枠は法の対象外、赤い枠は特定臨床研究、黄色の枠は特定臨床研究以外の臨床研究(努力義務)です。観察研究は、「④通常診療の結果ではなく研究目的で投与・使用する?」が「いいえ」で、かつ「A. 研究のために追加する検査等が著しい負担?」も「いいえ」のときに、法の対象外に着きます。これは実データの図ではなく、公式の判定基準を図にしたものです。
下の表は、事例集に載っている公式の事例を、図の流れに当てはめたものです。「公式の分類」は事例集がまとめられている区分(特定リスト/臨床研究リスト/対象外リスト)に基づきます[資料5]。事例集の本文は、当時のQ&A(統合版)の問番号を引いています。そのQ&Aは令和7年5月31日付で廃止され、令和7年5月15日付のQ&Aに置き換わっていますので[資料4]、問番号は参照せず、事例の趣旨のみを使っています。
| 事例集の番号 | 事例(要約) | 公式の分類 | 図での道筋 |
|---|---|---|---|
| 1-1 | 国内の医薬品等製造販売業者の海外子会社から研究資金等の提供を受ける | 特定臨床研究 | ④はい → 資金の条件に当たる |
| 1-3 | 2型糖尿病で承認されている経口血糖降下剤を、2型糖尿病かつ心不全の患者で、心不全の改善について評価する | 特定臨床研究(承認されていない心不全についての評価のため) | ④はい → 適応外に当たる |
| 2-4 | 腹痛などの症状を効能・効果とする漢方薬で、その症状を一つの症状とする疾病の患者を対象に評価する | 臨床研究(特定臨床研究ではない) | ④はい → 特定の条件に当たらない |
| 3-1 | 医療機器で体温の計測のみを行う | 対象外(ただし、疾患該当性などの診断を行う場合は医行為に当たり、対象になるとされています) | ②いいえ |
| 3-5 | 有効性・安全性の評価を目的とせず、要指導医薬品または一般用医薬品の使用者に使用感(飲みやすさなど)を聴く | 対象外 | ③いいえ |
| 3-15 | 国内に治療法のない疾患に、海外のみで承認された医薬品を診療の一環として使い、その結果としての診療情報や試料を利用する | 観察研究のため対象外 | ④いいえ → Aいいえ |
1-3と同じ事例集は、同じ薬を2型糖尿病の患者に使い、心血管イベントの発生率などを評価する研究は適応内の臨床研究であり、製薬企業等からの資金提供がなければ特定臨床研究には当たらない、とも記しています。同じ薬でも、評価する対象が承認の範囲内か外かで、区分が変わるということです。
5. 倫理指針の経路との違い
法の対象外の研究は、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の側で扱われます。指針の適用範囲(第3)は、法令の規定により実施される研究や、法令の定める基準の適用範囲に含まれる研究を、指針の対象としないと定めています[資料10](令和5年3月27日一部改正の本文と、令和8年8月27日一部改正の本文で同じ記載)。なお、特定臨床研究以外の臨床研究については、厚生労働省のQ&Aの問7-6が、臨床研究実施基準のみの遵守に努めることで差し支えないと答えています[資料4]。所属機関が独自に指針への適合も求める場合がありますので、機関の規程をご確認ください。
指針は令和8年8月27日に一部改正が告示され、同年12月1日から施行されます(同日付の施行通知)[資料10]。2026年10月11日時点では、改正前後のどちらの本文が自分の計画に適用されるかを、倫理審査委員会に確認するのが確実です。改正に伴う条番号の違いは、オプトアウト同意の記事で整理しています。倫理審査が不要になる場面の考え方は、倫理審査が不要な研究をご覧ください。
| 項目 | 臨床研究法の経路 | 倫理指針の経路 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 医薬品等を人に用い、有効性・安全性を明らかにする研究(特定/非特定) | 人を対象とする生命科学・医学系研究(法令の規定により実施される研究や、法令の定める基準の適用範囲に含まれる研究は対象としない。第3) |
| 審査 | 特定:実施計画に記載したCRBの意見を聴く(第5条)。非特定:CRBの意見を聴くよう努める(第21条) | 研究責任者は倫理審査委員会の意見を聴き(第6の2⑴)、研究機関の長の許可を受ける(第6の2⑶) |
| 実施の許可・提出 | 特定:実施計画を厚生労働大臣に提出(第5条) | 研究機関の長の許可(第6の2⑶) |
| 従うべき基準 | 臨床研究実施基準(特定は義務、非特定は努力義務。第4条) | 倫理指針 |
6. 認定臨床研究審査委員会(CRB)と施設の倫理審査委員会
CRBは、臨床研究に関する専門的な知識経験を持つ者で構成され、審査意見業務を行う委員会のうち、設置者が厚生労働大臣の認定を受けたものです(第23条第1項)。設置者になれるのは、病院・診療所の開設者や、医学医術に関する学術団体その他の省令で定める団体です。認定の有効期間は3年で、更新が必要です(第26条第1項)[資料1]。
- 特定臨床研究:実施計画にCRBの名称を記載し(第5条第1項第8号)、提出の際にそのCRBの意見を聴きます(第5条第3項)。疾病等の発生の報告(第13条)や定期報告(第17条)の宛先もこのCRBです。
- 非特定の臨床研究:CRBの意見を聴くよう努めます(第21条)。
- 法の対象外:倫理指針に基づき、倫理審査委員会の意見を聴きます(第6の2⑴)。施設の委員会が認定を受けているとは限りません。特定臨床研究で依頼する委員会が認定を受けたCRBかどうかは、下のjCRBで確認できます。
CRBは、厚生労働省のjCRB(認定臨床研究審査委員会申請・情報公開システム)で認定情報や業務規程・委員名簿などが公開されています[資料9]。検索画面には、認定番号、委員会の都道府県、設置者氏名、設置主体(病院・診療所の開設者、医学医術に関する学術団体、一般社団法人・一般財団法人、国立大学法人など)、委員会名称、認定時期の検索条件が表示されます(2026年10月11日確認)。施行規則第86条は、CRBの設置者に、審査手数料、開催日程、受付状況の公表を求めています[資料2]。審査を依頼する側が比較しやすいように、ということです。
7. jRCTへの登録
jRCTは、厚生労働省が整備する、臨床研究等の提出・公開システムです。トップページの「このシステムについて」は、臨床研究法などに基づき厚生労働大臣へ実施計画の提出などを行うためのシステムであること、また、臨床研究実施基準に基づき、WHOが公表を求める事項や研究過程の透明性の確保、国民の参加の選択に資する情報を公開していることを述べています[資料8]。
なお、同じページのお知らせには、2026年3月末から、再生医療以外の届出で、実施計画の提出前に一定の研究情報を入力して「仮登録」するとjRCT番号が発行されること、仮登録の段階ではjRCTに公開されないことが載っています(2026年10月11日確認)。論文に書く番号は、公開された登録のものかどうかを、研究の事務局に確認してください(これは編集上の助言です)。
| 研究の区分 | jRCTの扱い |
|---|---|
| 特定臨床研究 | 実施計画を厚生労働大臣に提出すると、施行規則第24条第1項の公表を行ったものとみなされます(第24条第6項)[資料2] |
| 非特定の臨床研究 | 臨床研究実施基準(施行規則第24条第1項:厚生労働省が整備するデータベースへの記録による公表)に従うことが努力義務です。Q&Aは、jRCT以外の国内外の登録機関への記録は第24条の「公表」を行ったことにならない(問3-23)、公表日が研究の開始日であり、それまでは説明・同意取得を始めない(問3-22)、としています[資料2、4] |
| 法の対象外(倫理指針) | 介入を行う研究は、jRCT等の公開データベースへの研究概要の登録が必要で、それ以外の研究も登録に努めます(指針第6の4⑴)[資料10] |
jRCTの検索画面には「研究の種別」として、特定臨床研究(特定臨床研究/非特定)、その他臨床研究(観察/手術手技/その他/保留)、治験、再生医療等研究が表示されます(2026年10月11日確認)。また、jRCTには「その他の臨床研究」の「観察研究」の入力ガイダンス(2025年3月版)が公開されています。その中で、症例登録予定日が過去の日付だと、学術誌等から事後登録とみなされる場合があるため、早めの登録を、と注意されています[資料8]。観察研究でも、論文化を考えるなら、早い時期の登録をお勧めします。
8. 英文の倫理・登録記載の書き方
投稿規程が求める倫理・登録の記載は、ジャーナルごとに異なります。ここでは、どの経路でも共通する書き方のコツと、3つの経路の雛形を示します。雛形は編集上の助言であり、公式の文例でも、ジャーナルの規則でもありません。[ ]の中は、ご自身の情報に置き換えてください。
- 法の名称は Clinical Trials Act (Act No. 16 of 2017) と書き、研究の種類は、その法令用語だけに頼らず平易な言葉でも説明します(法令の英訳では「臨床研究」が clinical trials になるため、読者が治験と取り違えるおそれがあります)。
- 倫理指針の公式英訳(厚生労働省の「指針英語版」)の表題は Ethical Guidelines for Medical and Biological Research Involving Human Subjects です[資料10](令和5年3月27日一部改正までを反映した英訳)。令和8年改正を反映した英訳は、確認できていません。
- 法令の英訳では「臨床研究」が clinical trials になるため、雛形Bのように、「特定臨床研究ではない臨床研究」であり、承認申請のための治験(chiken)ではないことを、かっこ書きなどで補うと誤解を避けられます。
- 雛形Aの confirmed は事実の記載です。実際にそのような確認を受けた場合にだけ使い、受けていなければ削除するか、書き換えてください。
- 「CRBが審査した」と「施設の倫理審査委員会が承認した」を混同しないでください。委員会の名称・承認番号・承認日は、委員会が出した文書のとおりに書きます。
- jRCTの番号は、実際に登録した場合にだけ書きます。
雛形A:法の対象外(観察研究、倫理指針)
This retrospective observational study used clinical information recorded during routine care. No intervention was assigned and no examination was added for research purposes. The [institutional review board / research support office] of [institution] confirmed that the study did not fall within the scope of the Clinical Trials Act (Act No. 16 of 2017), and the study was conducted in accordance with the Ethical Guidelines for Medical and Biological Research Involving Human Subjects. The protocol was approved by the Institutional Review Board of [institution] (approval no. [ ]; date [ ]). [Informed consent was waived / Information about the study was disclosed through an opt-out notice at [location], and individuals were given the opportunity to decline participation, as approved by the IRB.] [Study registration: jRCT [number] / not registered.]
雛形B:臨床研究法の臨床研究(非特定)
This study fell under the Clinical Trials Act (Act No. 16 of 2017) as a clinical research study other than a specified clinical trial (that is, a non-specified clinical study under the Act, distinct from a regulatory drug trial for approval, known in Japan as chiken). The study plan was [reviewed by the Certified Review Board [name] (certification no. [ ]) / approved by the Institutional Review Board of [institution] (approval no. [ ]; date [ ])]. Informed consent was obtained from all participants. [The study was registered in the Japan Registry of Clinical Trials (jRCT) before enrollment (jRCT [number]).]
雛形C:特定臨床研究
This study was a specified clinical trial under the Clinical Trials Act (Act No. 16 of 2017). The implementation plan was reviewed by the Certified Review Board [name] (certification no. [ ]) and submitted to the Minister of Health, Labour and Welfare, and the study was registered in the Japan Registry of Clinical Trials (jRCT) before enrollment ([jRCT number]). Informed consent was obtained from all participants. [Funding and conflicts of interest: …]
どの雛形でも、資金源と利益相反は別の項に書きます。報告ガイドラインとの関係は倫理承認とインフォームド・コンセントの正しい報告方法、RCTの登録はCONSORT声明をご覧ください。臨床研究に関する文書全般のご相談は、臨床研究文書支援のページにまとめています。
まとめ
臨床研究法の対象かどうかは、「医薬品等を人に使い、有効性・安全性を明らかにする研究か」から始まり、「研究のために医療行為が決められたり、著しい負担の検査が加えられたりしていないか」で分かれます。診療の結果としての情報を使う観察研究・後ろ向き研究は、施行規則第2条第1号により対象外で、倫理指針の側で扱います。研究者が適用を選ぶことはできませんので、迷うときは、計画書の段階で所属機関の倫理審査委員会・研究支援部門に相談してください。
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よくある質問
後ろ向き研究は臨床研究法の対象ですか。
診療録など通常診療の結果としての情報や試料を使い、研究のために検査や投薬を決めない研究は、施行規則第2条第1号とQ&A問1-12により、いわゆる観察研究として対象外です。ただし、研究目的で穿刺を伴うなど著しい負担の検査を診療に追加する場合は対象になります。個々の計画の判断は所属機関の倫理審査委員会・研究支援部門が行います。
製薬企業から資金提供を受けると、特定臨床研究になりますか。
特定臨床研究は、臨床研究のうち、企業等から資金の提供を受けてその企業の医薬品等を使うもの、または未承認・適応外の医薬品等を使うものです(第2条第2項)。そもそも臨床研究に当たらない研究(たとえば観察研究)は、資金提供があっても特定臨床研究にはなりません。対象外でも、利益相反の状況は結果の公表時に明らかにすることが望ましいとされています(Q&A問1-12の注記)。
臨床研究法を自分の判断で適用して実施できますか。
できません。Q&A問1-22・1-23は、適用は研究者の意向ではなく、計画の内容が適用範囲に入るかで決まるとしています。法の定義に当たらない研究に法を適用することも、特定臨床研究に当たらない研究を特定臨床研究として実施することもできません。
認定臨床研究審査委員会と、施設の倫理審査委員会のどちらで審査を受けますか。
特定臨床研究は、実施計画に記載したCRBの意見を聴きます(第5条)。特定臨床研究以外の臨床研究は、CRBの意見を聴くよう努めます(第21条)。法の対象外の研究は、倫理指針に基づく倫理審査委員会の意見を聴きます(指針第6の2⑴)。どの委員会に依頼するかは、所属機関の規程もあわせてご確認ください。
jRCTへの登録は必要ですか。
特定臨床研究は、実施計画の提出により公表を行ったものとみなされます(施行規則第24条第6項)。特定臨床研究以外の臨床研究は努力義務で、jRCT以外の登録は第24条の「公表」になりません(Q&A問3-23)。法の対象外の研究は、倫理指針に基づき、介入を行う研究では登録が必要で、それ以外も登録に努めます(指針第6の4⑴)。
倫理・登録の英文記載を、整えたい方へ
研究がどの区分に当たるかの判断は、所属機関の倫理審査委員会・研究支援部門、必要に応じてCRBが行います。Editverse Japanは、その判断を代わりに行うことはしません。判断が決まったあとの英文の倫理・登録記載を、医学論文英文校正で整えるお手伝いをします。倫理審査の申請書類の作成もご相談いただけます。審査や論文の採否をお約束するものではありません。
参考資料・公式情報(確認日:2026年10月11日)
- 臨床研究法(平成29年法律第16号)。e-Gov法令検索、現行版(令和8年5月1日施行、令和7年法律第37号による改正を反映)。https://laws.e-gov.go.jp/law/429AC0000000016。第1条、第2条、第4条、第5条、第13条、第17条、第21条、第22条、第23条、第26条を確認。
- 臨床研究法施行規則(平成30年厚生労働省令第17号)。e-Gov法令検索、現行版(令和7年11月20日施行)。https://laws.e-gov.go.jp/law/430M60000100017。第2条、第2条の2、第24条、第86条を確認。
- 厚生労働省「臨床研究法について」。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000163417.html
- 厚生労働省「臨床研究法の施行等に関するQ&Aについて」(令和7年5月15日事務連絡)。PDF。問1-12、1-13、1-22、1-23、3-22、3-23、7-6を確認。
- 厚生労働省「臨床研究法の対象となる臨床研究等の事例集について(その1)等の改訂について」(令和4年3月31日事務連絡)。PDF
- 厚生労働省「特定臨床研究の該当性に関するチェックリスト」(チェックリスト-1)。PDF
- 厚生労働省「臨床研究法における研究対象者に著しい負担を与える検査等の該当性判断に関するガイダンス」(令和7年5月)。PDF
- jRCT(臨床研究等提出・公開システム)。トップ、臨床研究検索、入力ガイダンス(その他の臨床研究:観察研究)2025年3月版
- 認定臨床研究審査委員会申請・情報公開システム(jCRB)。https://jcrb.mhlw.go.jp/
- 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針。厚生労働省「研究に関する指針について」:一覧。令和5年3月27日一部改正の本文、令和8年8月27日一部改正の本文、施行通知(令和8年8月27日)、指針英語版
- 法務省 日本法令外国語訳データベースシステム「Clinical Trials Act」。https://www.japaneselawtranslation.go.jp/en/laws/view/5213