令和8年度厚生労働科学研究費補助金の一次公募で、23の研究事業ごとの公募研究課題数を示した横棒グラフ。がん政策研究が19課題で最多

厚労科研の申請|科研費との違い・公募課題・評価の観点【令和8年度公募版】

厚生労働科学研究費補助金(厚労科研)は、科研費と違い、厚生労働省が「公募研究課題」を示し、その課題に沿った研究を募る制度です。応募者は、自分の問いを立てる前に、公募課題の目標と「求められる成果」に自分の研究が応えられるかを確かめる必要があります。本記事は、令和8年度の公募要項(一次)と厚生労働省の公募ページ(2026年10月10日確認)をもとに、科研費との違い、公募課題の読み方、評価の観点、応募の流れを整理します。

厚労科研と科研費の違い|「研究者の問い」か「行政の課題」か

厚労科研の目的は、公募要項によると、「厚生労働科学研究の振興を促し、もって、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関し、行政施策の科学的な推進を確保し、技術水準の向上を図ること」です。応募された課題は、事前評価委員会で「専門的・学術的観点」や「行政的観点」などから総合的に評価されます。科研費の書き方は科研費申請書の書き方、種目の違いは基盤C・若手研究の違いと書き方で解説しています。

項目 科研費 厚労科研
課題の決め方 研究者が研究課題を発案し、種目と審査区分を選んで応募する 厚生労働省が示す「公募研究課題」(課題名、目標、求められる成果、研究費の規模等、採択条件)に沿って応募する
審査 JSPSの審査委員が、評定要素に沿って学術的な観点から審査する 外部専門家による事前評価委員会が、専門的・学術的観点、行政的観点、効率的・効果的な運営の確保の観点から評価する
応募の方法 科研費電子申請システム e-Radのみ(郵送・メールでの応募は不可)
研究期間 種目ごとに定められた年数(基盤研究(C)は3〜5年など) 課題ごとに示される(令和8年度一次公募は1〜3年)
研究費の規模 種目ごとの応募総額の上限(基盤研究(C)は500万円以下) 課題ごとに「1課題当たり年間○千円程度」と示される(令和8年度一次公募の中央値は900万円)

出典:厚生労働省「令和8年度 厚生労働科学研究費補助金公募要項(一次)」、JSPS令和9年度公募要領。科研費の欄は本サイトの該当記事で確認した内容です。

令和8年度の公募状況と、令和9年度の見通し

令和8年度は、一次から三次まで3回の公募が行われました。2026年10月10日の時点で、いずれも公募期間は終了しています。

公募 公募期間 備考
令和7年度 一次 令和6年12月26日(木)〜令和7年1月30日(木)午後5時30分 参考(前年度)
令和8年度 一次 令和7年12月24日(水)〜令和8年1月30日(金)午後5時30分 141課題(23研究事業)。次節で集計
令和8年度 二次 令和8年3月31日(火)〜5月1日(金)午後5時30分 —
令和8年度 三次 令和8年8月7日(金)〜9月11日(金)午後5時30分 —

令和9年度の公募要項は、2026年10月10日の時点で、厚生労働省のページでは確認できませんでした。令和7年度と令和8年度の一次公募は、いずれも12月下旬に始まり、1月30日の午後5時30分が締切でした。次回も同じ時期とは限りませんので、厚生労働省の「研究事業」のページで公募要項の公表を確認してください。

公募課題の読み方|1課題が5つの項目で書かれている

公募要項の各課題は、「(1)研究課題名(課題ID)」「(2)目標」「(3)求められる成果」「(4)研究費の規模等」「(5)採択条件」の順に書かれています。たとえば、政策科学推進研究事業の課題「諸外国の私的年金制度における拠出限度額、脱退一時金その他低所得者等の拠出支援策の調査研究」(26AA0101)では、研究費の規模は「1課題当たり年間5,000千円程度(間接経費を含む)」、研究実施予定期間は令和8年度、新規採択課題予定数は「1課題程度」と示されています。採択条件には、研究班に若手研究者・女性研究者を参画させるよう努めること、といった項目も入ります。研究費の規模などは「おおよその目安」で、予算成立の状況等により変動することがあります。

令和8年度一次公募の141課題を、当社で集計しました。

  • 公募課題:23の研究事業に141課題。がん政策研究事業が19課題で最多で、障害者政策総合研究事業が17課題、循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業が15課題、地域医療基盤開発推進研究事業が14課題と続きます。
  • 新規採択課題予定数:各課題の「課題程度」を合計すると160〜163課題程度です。135課題は「1課題程度」で、1つの課題を狙う応募者の間で、採択は1件を争う形になります。
  • 1課題当たりの年間研究費(間接経費を含む):中央値は900万円、四分位範囲は650万〜1,400万円で、最小は100万円(長寿科学政策研究事業)、最大は8,300万円(エイズ対策政策研究事業の1課題)です。
  • 研究実施予定期間:1年が9課題、2年(令和9年度まで)が49課題、3年(令和10年度まで)が83課題でした。
令和8年度厚生労働科学研究費補助金の一次公募で、23の研究事業ごとの公募研究課題数を示した横棒グラフ。がん政策研究が19課題で最多
図7. 令和8年度 厚労科研(一次公募)の事業別公募課題数(厚生労働省の公募要項を集計)
令和8年度厚生労働科学研究費補助金の一次公募141課題について、1課題当たりの年間研究費の規模と研究実施予定期間を示した積み上げ棒グラフ。中央値は900万円
図8. 令和8年度 厚労科研(一次公募)の1課題当たり年間研究費の規模と研究実施予定期間(厚生労働省の公募要項を集計)

読み方:年間の研究費が1,000万円を超える課題は48課題(141課題の約34%)で、多くは3年の課題です。範囲で示された5課題(難治性疾患政策研究事業3課題、地球規模保健課題解決推進のための行政施策研究事業1課題、食品の安全確保推進研究事業1課題)は、範囲の中央値で集計しました。この集計は公募要項の記載を数えたもので、採択率や実際の配分額を示すものではありません。令和8年度の二次・三次の課題は含みません。

事前評価の観点|学術性に加えて、行政への活用が問われる

公募要項は、事前評価で次の3つの観点から総合的に評価すると定めています(倫理性など総合的に勘案すべき事項も評定事項に加わります)。

  • 専門的・学術的観点:厚生労働科学分野における重要性、発展性、独創性・新規性、研究目標の実現性・効率性(年度ごとの目標が明確か)、研究者の資質と施設の能力(臨床研究の場合は、疫学・生物統計学の専門家が関与しているか)
  • 行政的観点:政策等への活用(施策への直接反映、または政策形成の過程での間接的な活用の可能性。活用が分かりやすく具体的に示されているか)、行政的緊急性
  • 効率的・効果的な運営の確保の観点:効率性が確保されない場合は、研究計画の見直しが条件になります

公募課題によっては、必要に応じて、申請者へ研究の背景、目的、構想、研究体制、展望などのヒアリングや、施設の訪問調査が行われます。採択された課題は文書で通知され、厚生労働省のホームページなどで公表されます。複数年度で採択された課題でも、中間評価によって途中で終了することがあります。

公募要項の注意事項は、応募する研究内容が「行政のニーズを満たす成果を示せるものであるかどうか」を十分に検討したうえで、研究計画書にどのような成果を示せるかを明確に書くよう求めています。申請書では、まず公募課題の「目標」と「求められる成果」に、自分の研究がどう応えるかを示します。

応募の流れと必要な書類

  1. e-Radの登録:研究機関と研究者がe-Radに登録されている必要があります。登録に日数を要することがあるため、2週間以上の余裕を持つよう案内されています。
  2. 公募課題の確認:「各公募研究課題の概要等」で、目標、求められる成果、研究費の規模等、採択条件を確認します。
  3. 研究計画書の作成・提出:研究代表者が、研究計画書(様式A(1))をe-Radで提出します(法人が実施する場合は様式B(1))。申請書の書面提出は、原則求められません。
  4. 所属機関の承認:研究代表者が所属機関に申請した段階では、応募は完了していません。所属機関の承認の手続きが必要です。
  5. 研究インテグリティの入力:研究代表者と研究分担者の全員が、e-Rad外の研究費の状況、現在のすべての所属機関・役職、所属機関への適切な報告に関する誓約などを入力する必要があります。入力がないと、応募の受付が完了しません。
  6. 受付状況の確認:提出締切日までに、受付状況一覧画面で「配分機関受付中」になっていない書類は無効です。最終日は午後5時30分に終了します。
厚生労働省の令和8年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(3次)のページで、公募期間、e-Radのみで応募すること、研究インテグリティの入力、公募要項と様式のリンクを赤枠で示した画面
画面1. 厚労科研の公募要項ページ(厚生労働省、令和8年度三次公募、2026年10月10日確認)

画面の見方:赤枠①は公募期間(午後5時30分厳守)、②はe-Radのみで応募すること(郵送やEメールは不可)、③は研究インテグリティの入力です。赤枠④は公募要項、⑤は今回公募する課題の一覧、⑥は研究計画書の様式、記載例、研究分野一覧のリンクです。同じページに、体制整備等自己評価チェックリスト、若手研究者の自発的な研究活動等の支援、バイアウト制度の案内も並びます。

※画面は、手順の解説のために厚生労働省の公開ページの該当箇所を切り取り、赤枠と番号を加えたものです(右側のメニューは省略)。出典:令和8年度 厚生労働科学研究費補助金公募要項(3次)(厚生労働省、2026年10月10日確認)。

申請以外に確認しておく項目

  • 研究データの管理(DMP):令和6年度から新規に開始するすべての研究で、研究班ごとにデータマネジメントプラン(DMP)を作成します。研究代表者は、研究開始前までに作成が必要です。
  • 倫理審査・利益相反の状況報告:研究代表者と研究分担者は、実績報告書の提出時に、倫理審査と利益相反の管理の状況を厚生労働省に提出します。
  • 臨床研究の登録:臨床研究法の臨床研究や医師主導治験はjRCTに登録します。介入を行う研究は、開始までにjRCTまたはUMIN-CTRなどに登録し、実績報告書の提出時に登録の有無を記載した報告書を添付します。
  • 研究倫理教育の受講:公募要項の「研究倫理教育の受講等」の定めに従います。
  • 重複・過度の集中の排除:公募要項に「競争的研究費の不合理な重複及び過度の集中の排除」の項目があります。科研費などと同時に応募する場合は、この項目を確認してください。科研費側の確認は科研費 提出前チェックリストで解説しています。

研究組織と経費

研究代表者は、大学や附属試験研究機関、民間の研究所、研究を主な事業目的とする公益法人、独立行政法人などの国内の試験研究機関等に所属する研究者です。研究組織は、研究代表者、研究項目を分担する研究分担者、研究協力者で構成され、研究協力者は経費の配分を受けられません。研究代表者が決める方法によって、100万円以上の補助金の交付を受けて自ら資金を管理する研究分担者を、補助事業者等に加えることもできます。

対象経費は、物品費(設備備品費、消耗品費)、人件費・謝金、旅費、その他の4つの大項目です。人件費・謝金のうち、人件費は研究代表者・研究分担者に対するもの、常勤職員に対するものを含みません。外国旅費は、1行程につき最長2週間です。経費は補助金適正化法の適用を受け、目的外使用などの違反には、交付決定の取消しや返還などの処分が行われます。

スケジュール(令和8年度一次公募の例)

時期 手続き
令和7年12月 研究課題の公募(厚生労働省のホームページに掲載)
令和8年1月 研究計画書の作成・提出(e-Rad)、受付・審査
令和8年4月 研究開始、国庫補助通知
令和8年5月 交付申請書・承諾書の作成・提出、交付決定通知、補助金の交付
令和9年1月 次年度への継続を希望する場合は、継続申請の研究計画書を作成・提出
令和9年5月 事業実績報告書・研究報告書の作成・提出、補助金の確定(残額がある場合は返還)

出典:公募要項「Ⅶ.公募研究事業計画表(令和8年度一次公募)」。支出証拠書類は5年間保存します。

あわせて読みたい:民間財団の研究助成の探し方

よくある質問

Q. 厚労科研は、自分の研究テーマで応募できますか。

厚生労働省が示す公募研究課題に沿った研究が対象です。応募する研究内容が、課題の目標と求められる成果に応えられるかどうかを、公募要項の各課題で確認します。

Q. 応募は郵送やメールでもできますか。

できません。e-Radを用いたオンラインでの応募のみです。

Q. 年間の研究費はどのくらいですか。

課題ごとに「1課題当たり年間○千円程度」と示されます。令和8年度一次公募の141課題では、中央値が900万円(間接経費を含む)で、100万円から8,300万円までの幅がありました。金額はおおよその目安で、予算成立の状況等により変動します。

Q. 公募要項の内容や採否について、問い合わせはできますか。

e-Radのヘルプデスクは、システムの操作方法に関する問合せを受け付けています。公募要項の内容、審査状況、採否に関する問合せには回答しないと、公募要項に書かれています。公募内容の照会先は、公募要項の照会先一覧で確認してください。

研究費申請の全体像は研究費申請書添削支援のページで、科研費・学振・AMED・JSTなどの種目を横断してご確認いただけます。

公費・研究費でのご利用

見積書を発行いたします

科研費・AMED・JST等の公的研究費でお支払いいただけます。ご依頼前に見積書、納品時に納品書(貴機関の検収手続にそのままご利用いただけます)、検収後に請求書を発行いたします。請求書の宛名のご指定にも対応いたします。

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参考資料

上記の内容は2026年10月10日に厚生労働省の公開資料で確認しました。図7・図8と本文の数値は、令和8年度一次公募の公募要項の記載を当社で集計したものです。公募の時期、課題、研究費の規模、様式は年度ごとに変わるため、応募前に最新の公募要項でご確認ください。

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