基盤研究(C)と若手研究の新規応募件数と採択率の推移(2018〜2026年度)。基盤Cの応募件数は2026年度に47,969件と最多、採択率は25.9%で表示期間中最低。若手研究の採択率は2019年度以降40.0〜40.4%で安定

科研費 基盤C・若手研究の違いと書き方|採択率と審査の仕組み

科研費の基盤研究(C)は、1人または少人数のチームで行う3〜5年の研究計画に総額500万円以下を助成する種目です。若手研究は、博士の学位取得後8年未満の研究者が単独で行う2〜5年の研究に、同じく総額500万円以下を助成します。2026年度(令和8年度公募分、2026年8月時点)の新規採択率は、基盤研究(C)が25.9%(応募47,969件中12,419件)で本記事で集計した9年間で最も低く、若手研究は40.1%(14,771件中5,928件)でした。どちらの種目も小区分ごとに3名の審査委員が2段階の書面審査で同じ3つの評定要素を評価し、基盤研究(C)ではこれに加えて「国際性」が別途評価されます。評価を大きく左右するのは、研究計画調書のうち4ページの「研究目的、研究方法など」です。

令和9(2027)年度の公募は2026年9月17日に締め切られました。上で示した採択率は一つ前の令和8年度公募分(2026年8月時点)のもので、この公募の結果は含みません。日本学術振興会(JSPS)は基盤研究(C)と若手研究の審査結果を2027年2月26日に通知する予定です。本記事は、結果を待ちながら自分の申請書がどのように評価されているのかを知りたい方と、次回の申請書をうわさではなくルールと数字から書き始めたい方の、2種類の読者を想定しています。以下のルールはすべてJSPSの令和9年度公募要領、研究計画調書作成・記入要領、審査規程から、数値はすべてJSPS自身の年次統計表から取り、Rで再現しています。

私たちの役割について。科研費申請書の研究課題、研究デザイン、解釈、結論は申請者ご自身のものです。JSPSは、研究計画調書を研究代表者が自らの責任で作成することを求めています。第三者の読み手が正当に加えられるのは、構成の整理、わかりやすさ、公表されている審査基準との整合、そして日本語・英語表現の推敲です。

1. 基盤研究(C)か若手研究か:ルールを並べて比較

若手・中堅の申請者の多くは、この2種目のどちらに応募するかで迷います。違いは応募資格、研究組織、研究期間、そして評価項目が1つ多いかどうかであり、ページ数や中心となる評定要素は共通です。

項目 基盤研究(C) 若手研究
応募総額 500万円以下 500万円以下
新規採択1課題あたりの平均配分額(研究期間全体・直接経費、2026年度) 3,310,000円(最高5,000,000円) 3,264,000円(最高3,700,000円)
研究期間 3〜5年 2〜5年
研究組織 単独、または研究分担者を含むチーム 研究代表者1名のみ
応募資格 — 2027年4月1日時点で博士の学位取得後8年未満(令和9年度公募)。同日までに取得見込みの者を含む。産前・産後の休暇や未就学児の養育期間は除いて計算できる
受給回数の上限 — 若手研究(旧若手研究(S・A・B)を含む)は2回まで
その他の制限 — 2010年度以降に基盤研究(S・A・B・C)の研究代表者として採択されたことがある者は応募不可(2021年度公募から適用)
様式(添付ファイル) 様式S-14 様式S-21
「研究目的、研究方法など」 4ページ、必須の記述事項6項目(国際性を含む) 4ページ、必須の記述事項5項目
審査方式 小区分、審査委員3名、2段階書面審査、合議審査なし 同左
評定要素 (1) 学術的重要性、(2) 研究方法の妥当性、(3) 研究遂行能力及び研究環境の適切性 +国際性(別途評価) (1)〜(3)のみ
2026年度の採択率 25.9%(12,419/47,969) 40.1%(5,928/14,771)

出典:JSPS 令和9(2027)年度公募要領(pp. 6, 17–21, 23)、研究計画調書 様式S-14・S-21、配分状況一覧 令和8年度(基金分の表は研究期間全体の配分額。間接経費は別途)。基盤研究(C)の数値は、JSPSの表と同様に特設分野研究を除いています。

公募要領には、見落としやすい点が3つあります。

  • 若手研究は採択率を重視して配分されます。令和9年度公募要領は、より多くの若手研究者が最初の研究費を得られるよう、若手研究を「採択率を重視した配分」とすると明記し、その例として2026年度の数値(応募14,771件、採択5,928件、40.1%)を挙げています。
  • 基盤研究(B・C)には、国際性の高い若手研究者のための追加の採択枠があります。2025年度公募から、JSPSは基盤研究(A・B・C)で国際性を評価しており、国際性の評価が高い若手研究者の基盤研究(B・C)を追加で採択する「国際・若手支援強化枠」を設けています。
  • 令和9年度は、39歳以下の研究者について、挑戦的研究(萌芽)と基盤研究(C)の間の重複制限が緩和されました。2つの種目を同時に保有・応募できるかどうかは、公式の重複制限一覧表(別表1)で決まります。記憶や同僚の過去の経験に頼らず、必ず確認してください。確認の手順は科研費 提出前チェックリスト(重複制限の確認)で解説しています。

両方に応募資格がある場合、判断材料は若手研究の採択率の高さだけではありません。若手研究は生涯2回までという上限に数えられ、単独で行う研究でなければなりません。基盤研究(C)では研究分担者を置くことができ、国際性も評価されます。JSPSは研究者を若手研究のグループから基盤研究のグループへ段階的に移行させる方針を示しており、公募要領はこれを、受給回数の上限と基盤研究の研究代表者経験者に対する応募制限の理由として挙げています。最初の基盤研究(C)は「滑り止め」ではなく、若手研究の次のステップとして計画しましょう。そのうえで、実際に遂行する計画に合った種目を選んでください。

実際にいくら配分されるのか。500万円は上限であり、典型的な配分額ではありません。2026年度の新規採択全体で、研究期間全体の平均配分額(直接経費)は基盤研究(C)が3,310,000円、若手研究が3,264,000円でした(JSPS 配分状況一覧、基金分の表)。これとは別に、直接経費の30%にあたる間接経費が所属機関に配分されます。

新たに研究室を構える研究者のための追加支援。JSPSは「「基盤研究(C)」及び「若手研究」における独立基盤形成支援(試行)」も実施しています。基盤研究(C)または若手研究の課題で、自身の研究室を主宰する(研究室主宰者となる)若手研究者の研究基盤の整備を支援する試行事業です。公募は別に行われ(2026年度の受付期間は2026年3月23日〜5月15日)、申請書は研究機関が研究者とともに作成します。所属機関が参加しているかどうかは、研究支援部署に確認してください。詳細はJSPS「独立基盤形成支援(試行)」をご覧ください。

2. 数字で見る:基盤研究(C)と若手研究の9年間

JSPSは毎年「科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(新規採択分)」を公表しており、種目ごとの新規応募件数、新規採択件数、採択率が掲載されています。現在の審査システムが始まった2018年度(平成30年度)から2026年度(令和8年度)までの各年度の表から、基盤研究(C)と若手研究の行を取り出してグラフにしました。

基盤研究(C)と若手研究の新規応募件数と採択率の推移(2018〜2026年度)。基盤Cの応募件数は2026年度に47,969件と最多、採択率は25.9%で表示期間中最低。若手研究の採択率は2019年度以降40.0〜40.4%で安定
図1. 基盤研究(C)と若手研究の新規応募件数(左)と採択率(右)の推移、2018〜2026年度(データ:JSPS「科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(新規採択分)」各年度版)© editverse.com

読み方:基盤研究(C)の応募件数は2026年度に47,969件と、集計期間で最も多くなった一方で採択件数は減り、採択率は25.9%に下がりました。若手研究の採択率は、2019年度以降毎年およそ40%です。

グラフからわかることは次の3点です。

  • 基盤研究(C)は競争が厳しくなっています。応募件数は2023年度の43,689件から2026年度の47,969件に増えましたが、採択件数は2025年度の12,756件に対し2026年度は12,419件と、応募の増加に追いついていません。2018〜2025年度に27.4〜28.5%で推移していた採択率は25.9%に下がり、応募約3.9件に1件の採択という水準です。
  • 若手研究はおよそ40%で安定しています。2018年度の30.7%のあと、2019〜2026年度は毎年40.0〜40.4%です。2026年度は応募件数(13,883件→14,771件)、採択件数(5,585件→5,928件)とも2025年度より増えました。
  • 若手研究の応募件数は2021年度に大きく減少しました(18,708件→13,163件)。これは、基盤研究の研究代表者経験者が若手研究に応募できなくなった(第1節で紹介した制限)のと同じ公募です。ただし、減少のすべてをこの1つのルールで説明することはしません。表からわかるのは変化の大きさであり、その原因ではないからです。

書き手にとっての意味は明確です。基盤研究(C)では、およそ4件に3件が不採択になります。「手堅い」だけの申請書は、採択されない多数派に入ってしまうということです。その理由を次の節で見ていきます。

3. 申請書は実際にどう評価されるのか

基盤研究(B・C)と若手研究の審査ルールは、JSPSの「科学研究費助成事業における審査及び評価に関する規程」(別添5・別添6、令和8年6月22日改正)に定められています。その内容は、多くの申請者が思っている以上に具体的です。

誰が読むのか。基盤研究(C)と若手研究では、小区分ごとに3名の審査委員(基盤研究(B)は5名)が審査します。合議審査は行われません。

1段階目。各審査委員は、3つの評定要素をそれぞれ絶対評価の4段階(4 優れている、3 良好である、2 やや不十分である、1 不十分である)で評価したうえで、各申請課題に4段階の総合評点を付けます。総合評点は自分に割り当てられた他の申請課題との相対評価で、次の分布を目安に付けられます。

科研費の1段階目書面審査で各審査委員が付ける総合評点の分布の目安。評点4(非常に優れている)10%、評点3(優れている)20%、評点2(普通)40%、評点1(劣っている)30%で、評点3以上は合計30%
図2. 1段階目の書面審査における総合評点の分布の目安:評点4=10%、3=20%、2=40%、1=30%(データ:JSPS「科学研究費助成事業における審査及び評価に関する規程」別添5・別添6)© editverse.com

読み方:各審査委員が評点3または4を付けるのは、担当する課題のおよそ30%だけです。申請書が競っているのは合格点ではなく、順位の上位枠です。

審査委員は各申請課題について、長所と短所を中心とした審査意見も記入します。ある評定要素を2または1と評価した場合は、その評定要素のどの点が不十分だったかを選択しなければなりません。

2段階目。2段階目に進むのは、採否のボーダーライン付近の課題と、いずれかの審査委員が極端に低い評点を付けた課題だけです。同じ3名の審査委員が互いの1段階目の審査意見を読んだうえで、改めて総合評点を付けます。採否はこの評点に基づいて決定されます。

評点に含まれないもの。「研究費の応募・受入等の状況」と「人権の保護及び法令等の遵守への対応」は、総合評点の対象外です(別途確認されます)。

不採択だった場合のフィードバック。開示を希望した不採択の申請者には、小区分内でのおおよその順位、各評定要素に対する審査委員の平均評点、定型所見(審査委員が評定要素を低く評価した際に選択した項目)が開示されます。応募時に開示希望の欄にチェックを入れておきましょう。この開示内容は、次回の申請に向けた最も有用な材料になります。

評定要素と、申請書のどこで答えるか

評定要素 審査委員が問うこと 申請書で答える場所
(1) 研究課題の学術的重要性 研究課題の核心をなす学術的「問い」は明確で、独自性があるか。着想に至った経緯や、国内外の研究の中での位置づけは明確か。学術的・技術的・社会的に広い波及効果が期待できるか 「1 研究目的、研究方法など」の記述事項(1)〜(3)
(2) 研究方法の妥当性 研究方法は具体的で、目的に照らして適切か。研究経費は研究計画と整合しているか。準備状況は十分か 記述事項(4)〜(5)、Web入力の研究経費欄
(3) 研究遂行能力及び研究環境の適切性 これまでの研究活動から見て、この計画を遂行できるか。施設・設備・研究資料は整っているか 「2 応募者の研究遂行能力及び研究環境」(2ページ)
国際性:基盤研究(C)が対象、若手研究は対象外(基盤研究(A・B)も対象)。別途、絶対評価の4段階(「大いに期待できる」〜「あまり期待できない」)で評価 世界の研究を先導する、国際的な共同研究を通じて貢献する、あるいは日本発の研究として独自の価値を生み出すことが期待できるか 記述事項(6)

ここから2つのことが言えます。第1に、研究経費は評定要素(2)の中で評価されます。年度ごとの研究計画と一致しない経費の一覧は、会計上の細部ではなく研究方法の弱点と見なされます。審査委員は研究経費も別途確認しており(研究経費の妥当性)、経費が妥当でないと判断した場合は「×」を付けることができます。2名以上の審査委員から「×」が付いた課題は、応募額に対する配分額の割合が平均(平均充足率)より低く設定されます。また、設備備品費・旅費・人件費のいずれかが研究経費全体の90%を超える場合は、その点が個別に確認されます。第2に、規程は審査委員に対し、総合評点を高くするためにすべての評定要素が最高評価である必要はないと示しています。際立った長所を1つ持つ申請書が、全体的に「良好」な申請書より上位になることがあるのです。

わかりやすさがこれほど重要な理由は、研究費の審査に関する研究からも説明できます。NIHの審査を再現した研究では、同じ25件のNIH申請書に対する43名の審査者の評点と講評を分析したところ、申請書の質について審査者間の一致は、評点でも講評でも見られませんでした(Pier ら, 2018)[文献1]。また、パーセンタイル評点が20以内で採択されたNIHの研究費102,740件を再分析した研究では、その評点はその後の研究生産性をほとんど予測できませんでした(Fang ら, 2016)[文献2]。いずれも科研費についての研究ではありませんが、示している方向は同じです。採否のボーダーライン付近では、審査委員の判断にはばらつきがあります。審査委員が3名しかいない以上、3名全員が最初に読んだときに同じように理解できる計画ほど、このばらつきの影響を受けにくくなります。

様式と記入要領の入手先【公式ページの画面つき】

日本学術振興会(JSPS)の令和9年度公募ページには、公募要領・別冊、研究計画調書の様式、電子申請システムへの入口が同じページにまとまっています。基盤研究(C)は様式S-14、若手研究は様式S-21を使います。公募ページの構成は年度ごとに変わることがあるため、次回の公募が始まったら最新のページで確認してください。

日本学術振興会の科研費公募ページで、公募要領と別冊(応募書類の様式・記入要領)、審査区分表のPDFリンクを赤枠で示した画面
画面1. 公募要領・別冊・審査区分表のPDF(日本学術振興会・令和9年度公募ページ、2026年10月10日確認)

画面の見方:赤枠①は公募要領(日本語版PDF)、②は別冊(応募書類の様式・記入要領、日本語版PDF)、③は審査区分表(別表2)です。審査区分表は、応募する小区分を選ぶときに使います。

日本学術振興会の科研費公募ページで、科研費電子申請システムへのリンクとWeb入力項目の作成・入力要領を赤枠で示した画面
画面2. 科研費電子申請システムとWeb入力要領(日本学術振興会・令和9年度公募ページ、2026年10月10日確認)

画面の見方:研究計画調書は、科研費電子申請システムに入力する「Web入力項目」と、指定の様式で作成してアップロードする「添付ファイル項目」の2つで構成されます。赤枠①は科研費電子申請システム(外部サイト)へのリンク、②はWeb入力項目の作成・入力要領(PDF)です。

日本学術振興会の科研費公募ページで、基盤研究(C)の様式S-14と若手研究の様式S-21のWordダウンロード欄を赤枠で示した画面
画面3. 添付ファイル項目の様式(Word)ダウンロード表(日本学術振興会・令和9年度公募ページ、2026年10月10日確認)

画面の見方:赤枠①は基盤研究(C)の様式S-14、②は若手研究の様式S-21のWord版です。同じ表に、記入例(PDF)と英語版も並んでいます。

※画面は、手順の解説のために日本学術振興会の公開ページの該当箇所を切り取り、赤枠と番号を加えたものです。出典:令和9(2027)年度 基盤研究(A・B・C)、挑戦的研究、若手研究の公募について(日本学術振興会、2026年10月10日確認)。

4. 4ページの「研究目的、研究方法など」の書き方

様式S-14とS-21の冒頭に印刷されている指示に、何を書くべきかが明記されています。まず概要を簡潔に書き(作成・記入要領では10行程度)、本文では次の事項に触れる必要があります。

# 記述事項(様式の指示の要旨) 基盤研究(C)(S-14) 若手研究(S-21)
(1) 本研究の学術的背景と着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」
(2) 研究の目的、学術的独自性と創造性
(3) 関連する国内外の研究動向と、本研究の位置づけ
(4) 何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか
(5) 目的を達成するための準備状況
(6) 国際性(具体的かつ明確に) —
— 研究分担者がいる場合:各研究分担者の具体的な役割 —(単独)

各審査委員が、それぞれの評定要素を期待どおりの場所で見つけられるように4ページを組み立てる、実践的な方法は次のとおりです。

  • 1ページ目:概要と「問い」。10行程度の概要には、問い、目的、アプローチ、研究終了時に何が明らかになっているかを入れます。続く学術的背景では、何がわかっているのか、具体的に何が欠けているのか、自分のこれまでの研究がどのようにこの問いにつながったのかを書きます。問いは疑問文の形で書きましょう。(Web入力の任意項目である500字以内の「学術的「問い」(公開用)」欄は、審査には使われず、PDFにも出力されず、採択された場合に限りKAKENで公開されます。それでも、この欄を先に書いてみることは、1ページ目の焦点が絞れているかを確かめる良い方法です。この欄のルールは科研費申請書の書き方(学術的「問い」欄のルール)で紹介しています。)
  • 2ページ目:独創性と位置づけ。国内外の先行研究を具体的に挙げ、それに対して何が新しいのかを1〜2文で述べます。同じ小区分の審査委員が、あなたの研究テーマそのものの専門家とは限りません。違いは暗示するのではなく、明示してください。
  • 3ページ目:年度ごとの研究方法。各年度について、その年度の目標、方法、期待される成果、そしてある段階がうまくいかなかった場合にどうするかを書きます。「どこまで」明らかにするのかに答えるのはこの部分です。研究プログラム全体ではなく、研究期間内に到達するゴールを示してください。
  • 4ページ目:準備状況、(基盤研究(C)では)国際性、スケジュール。予備データ、試料やデータへのアクセス、取得済みの承認、共同研究者などを書きます。基盤研究(C)では、国際性の具体的な根拠を示します。たとえば既存の国際共同研究、国際的なデータセット、日本の研究ならではの貢献などです。「成果を英語で発表する」といった一般的な記述では根拠になりません。

守らないと評価を落とす書式ルール(JSPS 作成・記入要領より)

  • 本文は11ポイント以上(英語で作成する場合は10ポイント以上)。英語での作成も認められています。
  • 余白の変更、見出しや指示文の移動、ページ数の超過はできません。空白になったページもそのまま残します。
  • 基盤研究(A)以外のすべての種目で、申請書はモノクロ(グレースケール)で審査されます。赤と緑の違いに頼った図は読めなくなります。アップロード前に、図をグレースケールで確認してください。確認の方法は科学的図のアクセシビリティ(グレースケールでも読める図)で解説しています。
  • 「2 応募者の研究遂行能力及び研究環境」(2ページ):この計画を遂行できることを示す主要な業績だけを、完全な書誌情報とともに記載します。論文は掲載済みまたは採録決定済みのものに限ります。国際共同研究や海外の研究機関での研究経験など、関連する国際的な活動があれば記載しましょう(基盤研究(C)では国際性の根拠にもなります)。育児や介護のための休業などによる研究の中断について説明することもできます。
  • Web入力項目も、PDFと同じように丁寧に見直してください。締切後は修正できません。JSPSの作成・記入要領も、研究経費の桁の誤りや、研究課題名の誤字・脱字に特に注意するよう促しています。

最も多い構成上の問題は、計画の範囲を広げすぎることです。Bourne と Chalupa の「研究費獲得のための10の簡単なルール(Ten simple rules for getting grants)」は、経験の浅い申請者はつい多くを提案しすぎてしまい、そうした申請書は野心的すぎると判断されて低く評価されることが多いと指摘しています(Bourne & Chalupa, 2006)[文献3]。500万円・研究代表者1名規模の計画では、まさにこの点に注意が必要です。やってみたい実験をすべて並べた研究方法は、評定要素(2)で非現実的だと読まれてしまいます。

5. Rによる解析例:申請する研究期間で採択率は変わるのか

3年、4年、5年のどれで申請すべきかという質問はよく寄せられます。JSPSは、申請した研究期間別に応募件数と採択件数をまとめた「研究期間別新規応募・採択件数」という表も公表しています。2025年度と2026年度の表をRで解析しました。

library(ggplot2)
# JSPS 研究期間別新規応募・採択件数, 令和8(2026)年度(2026年8月現在)
kc <- data.frame(years = c(3, 4, 5),
                 apps  = c(35492, 8042, 4435),
                 adopt = c( 9098, 2424,  897))
round(100 * kc$apps / sum(kc$apps), 1)   # 研究期間別の応募件数の割合
round(100 * kc$adopt / kc$apps, 1)       # 研究期間別の採択率
prop.test(kc$adopt, kc$apps)             # 3つの採択率は等しいか

出力(基盤研究(C)、2026年度)

  • 応募件数の割合:3年 74.0%、4年 16.8%、5年 9.2%(合計47,969件で、JSPSの主表と一致)
  • 採択率:3年 25.6%、4年 30.1%、5年 20.2%
  • 比率の等質性の検定:χ² = 151.15、自由度 = 2、p < 2.2 × 10−16

若手研究(2026年度)は、2年 41.0%(n = 2,707)、3年 40.7%(n = 8,453)、4年 42.3%(n = 1,988)、5年 33.1%(n = 1,623)でした(χ² = 39.38、自由度 = 3、p = 1.4 × 10−8)。件数から計算した採択率は、すべてJSPSが表に記載している採択率と一致しました。

申請した研究期間別の採択率(2025・2026年度)。基盤研究(C)は4年が32.1%・30.1%で最も高く、5年が21.2%・20.2%で最も低い。若手研究は2〜4年が40.0〜42.6%、5年が34.5%・33.1%
図3. 申請した研究期間別の採択率(基盤研究(C)・若手研究、2025年度・2026年度)。n=応募件数(データ:JSPS「研究期間別新規応募・採択件数」令和7年度・令和8年度)© editverse.com

読み方:両年度とも、両種目で5年の計画の採択率が最も低く、基盤研究(C)では4年の計画が最も高くなっています。一貫したパターンですが、研究期間を変えれば結果が変わることを示すものではありません。

このデータの正しい読み方。このパターンは2年続けて見られるため(基盤研究(C)の4年:32.1%と30.1%、5年:21.2%と20.2%)、単年度の偶然ではありません。しかし、これは観察データの件数です。4年や5年を選ぶ申請者は、3年を選ぶ申請者とは分野、キャリア段階、研究の種類が異なり、このデータからそうした影響と研究期間そのものの影響を切り分けることはできません。採択率を追いかけて、計画を長くしたり短くしたりしないでください。

データから言えるのは、書き方のルールです。研究期間は、研究計画によって裏づけられていなければなりません。5年で申請するなら、3ページ目で、3〜4年には圧縮できない作業が毎年度あることを示す必要があります。後半の年度の記述があいまいであれば、評定要素(2)(具体的で適切な研究方法と、それに見合った研究経費)で評価を落とすことになります。

同じJSPSの表から見る予算の規模

研究経費を積算する際の参考として、2026年度の新規採択1課題あたりの初年度の平均配分額は、基盤研究(C)が1,245,000円(最高3,800,000円)、若手研究が1,349,000円(最高3,400,000円)でした。これらは基金種目としての初年度の配分額で、研究期間全体の平均は基盤研究(C)が3,310,000円、若手研究が3,264,000円と、上限の500万円を下回っています。JSPSは各小区分の配分額を予算に合わせて調整するため、配分額が応募額を下回ることがあります。評定要素(2)の整合性を審査委員がすぐに確認できるよう、研究経費は研究計画から項目ごとに積み上げてください。

小規模の研究費は、価値の低い投資ではありません。生命科学・医学分野の日本学術振興会の研究費を対象とした研究では、新たな研究トピックを生み出すうえで、資金提供者の側から見て最も効果的な投資は、研究代表者1人あたりの研究費規模が最も小さい区分(年間500万円未満)であったと報告されています(Ohniwa ら, 2023)[文献4]。これは資金提供者側の投資効果についての結果であり、採択の可能性についての結果ではありません。それでも、この規模で焦点を絞った明確な計画を、足がかりではなく本格的な研究計画として扱う理由にはなります。

6. 次の基盤研究(C)・若手研究に向けた5つのステップ

  1. 種目を確定する。若手研究なら、採択年度の4月1日時点での博士の学位取得後の年数、過去の若手研究の受給回数(上限2回)、基盤研究の研究代表者経験の有無を確認します。基盤研究(C)なら、研究分担者が誰で、それぞれ何を担当するのかを決めます。現在保有している研究費や応募予定の研究費についても、重複制限一覧表(別表1)を確認してください。
  2. 小区分を意識して選ぶ。3名の審査委員はその小区分から選ばれます。審査区分表を読み、研究課題の「問い」の重要性を最も理解してもらえる審査委員がいる小区分を選びましょう。
  3. 「問い」と10行の概要を最初に書く。問い、目的、アプローチ、到達点を10行で述べられないなら、4ページの本文も焦点が定まりません。
  4. 第3節の評定要素の表に沿って書く。各評定要素に明確な「置き場所」があること、研究経費と年度ごとの計画が同じ研究を説明していることを確認します。
  5. 早めに外部の目を入れる。Bourne と Chalupa は、想定される審査委員に近い立場の同僚に草稿を批評してもらう時間を確保し、そのうえで改めて新鮮な目で読み直すことを勧めています(Bourne & Chalupa, 2006)[文献3]。所属機関の学内締切は、JSPSの締切よりかなり前に設定されていることも忘れないでください。

あわせて読みたい:不採択だった場合の開示の読み方と再申請 / 採択後に必要な即時オープンアクセス対応

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科研費申請書添削(¥49,800)

基盤研究(C)・若手研究の申請書草稿を、公表されている評定要素(学術的重要性、研究方法と研究経費の整合性、研究遂行能力及び研究環境、基盤研究(C)では国際性)に照らして読み込みます。研究目的・意義の明確化、研究計画の論理的整合性のチェック、独創性・新規性の表現の強化、予算計画の妥当性の確認、具体的な改善提案、日本語表現の推敲を行います。研究課題、研究デザイン、結論は申請者ご自身のものであり、私たちが申請書を書くことはありません。また、採否はJSPSの審査で決まるため、採択をお約束することはできません。納期は通常7〜10営業日です。お急ぎの場合は、3営業日での対応(追加料金)もご相談いただけます。

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まとめ

  • 基盤研究(C):上限500万円(2026年度の研究期間全体の平均配分額は3,310,000円)、3〜5年、チームでの応募可、様式S-14で国際性を含む6つの記述事項。2026年度(令和8年度公募分、2026年8月時点)の採択率は25.9%(12,419/47,969)で、2018〜2026年度の集計で最も低い水準です。
  • 若手研究:上限500万円、2〜5年、単独、博士の学位取得後8年未満、受給は2回まで。様式S-21で5つの記述事項。2026年度の採択率は40.1%(5,928/14,771)で、2019年度以降およそ40%で安定しています。
  • 審査は3名の審査委員による2段階の書面審査で、合議審査はありません。1段階目では、各審査委員が評点3または4を付けるのは担当課題のおよそ30%だけです。
  • 4ページの「研究目的、研究方法など」が評定要素(1)(2)と(基盤研究(C)では)国際性を、2ページの「研究遂行能力及び研究環境」が評定要素(3)を担います。研究経費の整合性は、研究方法の評価に含まれます。
  • 2025・2026年度とも、両種目で5年の計画の採択率が最も低くなっていました。これは研究期間を変える理由ではなく、計画の各年度をしっかり裏づける理由として受け止めてください。
  • 令和9年度の審査結果は2027年2月26日に通知される予定です(交付内定は4月上旬)。不採択だった場合は、開示される順位、評定要素ごとの評点、定型所見が次回への出発点になります。

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よくある質問

Q. 基盤研究(C)と若手研究の違いは何ですか?

どちらも総額500万円以下を助成します。基盤研究(C)は研究期間3〜5年で、研究分担者を置くことができます。若手研究は研究期間2〜5年で、研究代表者1名が単独で行う必要があり、対象は博士の学位取得後8年未満(採択年度の4月1日時点)の研究者です。若手研究の受給は1人2回までで、基盤研究の研究代表者として採択されたことがあると応募できません。基盤研究(C)では国際性も評価されます。2026年度の研究期間全体の平均配分額(直接経費)は、基盤研究(C)が3,310,000円、若手研究が3,264,000円でした(JSPS 令和9年度公募要領、配分状況一覧 令和8年度)。

Q. 基盤研究(C)と若手研究の採択率はどのくらいですか?

2026年度の新規応募では、基盤研究(C)が47,969件中12,419件(25.9%)、若手研究が14,771件中5,928件(40.1%)を採択しました。基盤研究(C)は2018〜2025年度に27.4〜28.5%、若手研究は2019年度以降40.0〜40.4%で推移しています(JSPS 配分状況一覧)。

Q. 基盤研究(C)・若手研究の研究計画調書は何ページですか?

様式S-14(基盤研究(C))とS-21(若手研究)では、「研究目的、研究方法など」が4ページ以内、「応募者の研究遂行能力及び研究環境」が2ページ以内、「人権の保護及び法令等の遵守への対応」が1ページ以内です。本文は11ポイント以上(英語で作成する場合は10ポイント以上。JSPSは英語での作成も認めています)で、申請書はグレースケールで審査されます。

Q. 基盤研究(C)・若手研究はどのように審査されますか?

小区分ごとに3名の審査委員が、合議審査のない2段階の書面審査で評価します。1段階目では3つの評定要素を評価し、担当する他の申請課題との相対評価で総合評点を付けます。評点4・3・2・1の割合は、およそ10%・20%・40%・30%が目安です。ボーダーライン付近の課題は、審査委員が互いの審査意見を読んだうえで、2段階目で改めて評点が付けられます(JSPS 審査及び評価に関する規程 別添5・6)。

Q. 基盤研究(C)・若手研究の結果発表はいつですか?

令和9年度公募(2026年9月17日締切)では、JSPSは2027年2月26日に電子申請システムで審査結果を通知する予定で、交付内定は2027年4月上旬です。開示を希望した不採択の申請者は、その後、小区分内でのおおよその順位、各評定要素に対する審査委員の平均評点、定型所見を確認できます(JSPS 令和9年度公募要領)。

参考資料

PubMed収載文献(2026年10月1日にPubMedで書誌情報を確認)

  1. Pier EL, Brauer M, Filut A, Kaatz A, Raclaw J, Nathan MJ, Ford CE, Carnes M. Low agreement among reviewers evaluating the same NIH grant applications. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018;115(12):2952-2957. doi: 10.1073/pnas.1714379115. PMID: 29507248.
  2. Fang FC, Bowen A, Casadevall A. NIH peer review percentile scores are poorly predictive of grant productivity. eLife. 2016;5:e13323. doi: 10.7554/eLife.13323. PMID: 26880623.
  3. Bourne PE, Chalupa LM. Ten simple rules for getting grants. PLoS Comput Biol. 2006;2(2):e12. doi: 10.1371/journal.pcbi.0020012. PMID: 16501664.
  4. Ohniwa RL, Takeyasu K, Hibino A. The effectiveness of Japanese public funding to generate emerging topics in life science and medicine. PLoS One. 2023;18(8):e0290077. doi: 10.1371/journal.pone.0290077. PMID: 37590186.

日本学術振興会(JSPS)の公式資料

  • 日本学術振興会「令和9(2027)年度 科学研究費助成事業 公募要領(基盤研究(A・B・C)、挑戦的研究、若手研究)」2026年7月14日:公募要領(PDF)
  • 日本学術振興会「令和9(2027)年度 基盤研究(A・B・C)、若手研究 研究計画調書作成・記入要領(新規)」:作成・記入要領(PDF)
  • 日本学術振興会「別冊(応募書類の様式・記入要領)」令和9年度(様式S-14・S-21):別冊(PDF)
  • 日本学術振興会「令和9(2027)年度研究計画調書(Web入力項目)作成・入力要領」(学術的「問い」(公開用)欄):Web入力項目 作成・入力要領(PDF)
  • 日本学術振興会「科学研究費助成事業における審査及び評価に関する規程」(令和8年6月22日改正)別添5・別添6:審査及び評価に関する規程(PDF)
  • 日本学術振興会「科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(新規採択分)」平成30年度〜令和8年度(令和8年8月現在)、「研究期間別新規応募・採択件数」令和7・8年度:科研費データ(一覧ページ)。2026年度:配分状況一覧(PDF)、研究期間別(PDF)。2025年度:配分状況一覧(PDF)、研究期間別(PDF)。2018〜2024年度の表は一覧ページから参照できます。2020・2024・2025年度に公表された訂正は確認済みで、基盤研究(C)と若手研究の行には影響しません。
  • 日本学術振興会「「基盤研究(C)」及び「若手研究」における独立基盤形成支援(試行)」:独立基盤形成支援(試行)

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