科研費・JST・AMEDの即時OA義務化|グリーンOAで対応 — Editverse Japan

科研費・JST・AMEDの即時オープンアクセス義務化|対象・方法・実績報告【2026年版】

2025年度に新たに公募された科研費・JST・AMEDの一部の研究費では、助成を受けた査読付き学術論文と根拠データを、学術雑誌への掲載後に即時、「機関リポジトリ等の情報基盤」へ掲載することが義務づけられています。多くの研究者が心配するAPC(論文掲載公開料)の支払いは、必須ではありません。本記事は、内閣府の基本方針と具体的方策、日本学術振興会(JSPS)の案内(2026年10月10日確認)をもとに、対象、方法、「即時」の意味、実績報告での扱いを整理します。

対象|3つの条件をすべて満たす論文と根拠データ

内閣府の「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」(令和6年2月16日、統合イノベーション戦略推進会議決定)は、2025年度から新たに公募を行う対象の競争的研究費の受給者に、論文と根拠データの即時オープンアクセスを義務づけています。対象となるのは、次の3つをすべて満たす学術論文と、その根拠データです。

  • 2025年度以降に新たに公募された、対象制度の研究費による成果であること(2024年度以前に公募された課題は含まれません。科研費の場合、2025年度は令和7年度公募に当たり、2024年7月に公募が始まった課題から対象です)
  • 査読付きの学術論文であること
  • 電子ジャーナルに掲載されていること
資金配分機関 対象制度 備考
日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 —
科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ALCA-NextとCRONOSを除く
科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業 —
日本医療研究開発機構(AMED) 戦略的創造研究推進事業(革新的先端研究開発支援事業) AMEDの研究費全体ではなく、この事業に限られます

出典:内閣府「基本方針の実施にあたっての具体的方策」(令和6年2月21日関係府省申合せ、令和6年10月8日改正)の表と注。具体的方策は、対象制度を「2025年度に新たに公募を行う場合」として示し、制度の改廃に合わせて表を修正するとしています。

受給者には、研究分担者など研究費を受給するすべての人が含まれ、具体的な実施方法は研究代表者の統括のもとで適切に行うとされています(具体的方策の注)。JSTとAMEDの該当制度の違いは、AMED・JSTとは|科研費との違いで解説しています。

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何を公開するか|論文と根拠データ

論文:査読済みの研究論文で、著者最終稿を含みます。掲載する版は、出版社版または著者最終稿です。

根拠データ:掲載する電子ジャーナルの執筆要領や出版規程などで、透明性や再現性の確保の観点から公表が求められるデータ(Supplemental Dataなど)です。査読の過程などで求められるデータのように、公表を前提としていないデータは含まれません。具体的方策は、この方針によって、従来公開していなかった研究データの公開を新たに求めるものではない、と明記しています。

どこに公開するか|機関リポジトリが原則、ほかの方法でも可

具体的方策は、「機関リポジトリ等の情報基盤」への掲載を、次のいずれかの方法で行うものとしています。「情報基盤」とは、研究データ基盤システム(NII Research Data Cloud、NII RDC)上で論文と根拠データが検索できるものです。

  • 機関リポジトリ:所属機関に整備されている場合は、原則としてここに掲載します。
  • 分野別リポジトリなど:NII RDC上で検索できるものに掲載した場合は、掲載したものとみなされます。
  • Jxivや、JSTのリポジトリ((仮称)GRANTS Data):査読後の論文も、学術出版社などの許諾が得られればJxivで公開できます。
  • 出版社の電子ジャーナル上での即時OA(ゴールドOA):この場合も、実績報告に論文と根拠データの識別子を記載するなど、NII RDC上で検索可能にする手続きが必要です。
  • NII RDCで検索できないプラットフォーム:同様に、実績報告に識別子を記載して検索可能にする手続きが必要です。

複数の情報基盤に掲載しても構いません。上記を判断のフローにまとめると、次のとおりです。

科研費・JST・AMEDの即時オープンアクセス義務化について、対象かどうかと対応方法を4つの質問で整理した判断フロー図
図6. 即時オープンアクセスの判断フロー(内閣府の具体的方策とJSPSの案内をもとにEditverse Japanが作成)

JSPSの案内(科研費)の画面

日本学術振興会の科研費における論文のオープンアクセス化のページで、令和7年度から新たに公募する科研費の論文と根拠データの即時オープンアクセスの義務化の記載を赤枠で示した画面
画面1. 即時OA義務化の記載(日本学術振興会、2026年10月10日確認)

画面の見方:赤枠①は、令和7年度から新たに公募を行う科研費の助成を受けた査読付き学術論文と根拠データについて、学術雑誌への掲載後、即時に「機関リポジトリ等の情報基盤」へ掲載することが義務づけられる、という記載です。ページ内の図では、実施状況報告書・実績報告書で「即時オープンアクセスの実施有無」を報告することが示されています。科研費では、報告書に入力した研究成果情報がKAKENデータベースを通じて研究データ基盤システムに連携されます。

日本学術振興会の科研費における論文のオープンアクセス化のページで、ゴールドOAとグリーンOAの説明を赤枠で示した画面
画面2. ゴールドOAとグリーンOAの説明(日本学術振興会、2026年10月10日確認)

画面の見方:赤枠①はゴールドOA(学術雑誌を通したOA)で、著者がAPCを支払う場合があります。赤枠②はグリーンOA(機関リポジトリを通したOA)で、原則としてAPCの支払いは発生しません。出版社が「著者最終稿のみ登録可」「一定の公開不可期間(エンバーゴ)を設ける」などの条件を指定している場合があるため、ジャーナルのルールを確認します。

※画面は、手順の解説のために日本学術振興会の公開ページの該当箇所を切り取り、赤枠と番号を加えたものです。出典:科研費における論文のオープンアクセス化について(日本学術振興会、2026年10月10日確認)。

「即時」はいつまでか|エンバーゴなしと「3か月程度」の目安

具体的方策では、「即時」とは、対象の論文と根拠データについて、学術雑誌への掲載後の公開禁止期間(エンバーゴ)がないことをいいます。「学術雑誌への掲載」は、論文が電子版として掲載された時点で、冊子体の発行前に電子版が先行して掲載される場合は、その時点です。

機関リポジトリ等へ掲載する手続きに要する期間は、所属機関の体制によって異なるため、特段の規定は設けられていません。そのうえで、目安として、学術雑誌への掲載後3か月程度で「機関リポジトリ等の情報基盤」において公開されることが望ましいとされています。この「3か月程度」は、国の具体的方策に書かれた目安です。実際の登録手順や受付方法は機関ごとに異なるため、所属機関の図書館やURA部門の案内に従ってください。

即時OAが難しいとき|実績報告で理由を報告する

受給者は、即時オープンアクセスの実施に最大限努めます。そのうえで実施が困難な場合は、各年度の実績報告の際に、その理由を報告します。具体的方策が示す理由の選択肢(複数選択可)は、次の4つです。

  • a. 出版社や雑誌のポリシーでエンバーゴの規定が存在する
  • b. 出版社や雑誌のポリシーが存在しない、または不明瞭である
  • c. 既存の研究費を圧迫しない範囲での転換契約やAPC支払いの活用が困難である
  • d. その他(自由記述)

困難な理由が解消された場合は、速やかに「機関リポジトリ等の情報基盤」へ掲載します。なお、エンバーゴのない雑誌に掲載したものの、掲載手続きに時間を要して実績報告の時点で未実施の場合は、「実施有り」を選ぶ場合があることが、具体的方策の注に示されています。

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実績報告で何を書くか

具体的方策は、各資金配分機関への毎年度の実績報告で、個々の論文と根拠データごとに、次の情報を記載すると定めています。

  • 書誌情報、査読の有無、即時オープンアクセスの対象かどうか
  • 即時オープンアクセスの実施有無、実施していない場合はその理由
  • 論文へのリンク(出版社版のDOI、機関リポジトリ等のランディングページのURLなどの識別子)
  • 根拠データへのリンク(ランディングページのURLなどの識別子。根拠データの公表が求められていない場合はその旨)

実施している場合、リンクは原則として記載します。掲載の手続きに時間を要して記載できない場合などは、記載しないことも可能とされています。具体的方策は、2027年末前後が実施状況の初回調査になると見込み、2027年末を目途に、採択課題の成果情報をe-Radなどで効率的に確認できる機能を実装するとしています。実際の入力項目は、各資金配分機関の報告システムの案内で確認してください。

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APCは必須か|JSPSの案内

JSPSの案内では、どのジャーナルに投稿するかは研究者自身の判断に委ねられており、オープンアクセスジャーナルへの投稿を必ずしも求めるものではありません。ゴールドOAではAPCが必要になる場合がありますが、機関リポジトリを通したグリーンOAでは、原則としてAPCの支払いは発生しません。科研費では、オープンアクセス化のための投稿料・掲載料を直接経費から支出することもできます。

基本方針も、既存の研究費や採択件数を圧迫しないよう留意するとしています。また、JSPSは、査読が不十分なまま著者からAPCを得ることを目的とする、いわゆるハゲタカジャーナルへの投稿に注意を促しています。

投稿前に確認すること|出版社のポリシー

グリーンOAで対応する場合、機関リポジトリに登録できる版(著者最終稿のみ、出版社版も可など)と、公開までの期間(エンバーゴ)は、出版社やジャーナルによって異なります(JSPS)。出版契約(Copyright Transfer Agreementなど)にサインする前に、ジャーナルの自己アーカイブ方針を確認しておくと、掲載後の登録で慌てずに済みます。大学図書館の案内では、海外の雑誌は「Open Policy Finder」、国内の学協会誌は「学協会著作権ポリシーデータベース(SCPJ)」が確認先として紹介されています。英文校正と投稿準備の段階で、投稿先のOAポリシーも合わせて確認することをおすすめします。

よくある質問

Q. 自分の論文は対象ですか。

2025年度以降に新たに公募された対象4制度の研究費による成果で、査読付きの電子ジャーナルに掲載された論文と、その根拠データが対象です。課題がいつ公募されたかは、採択通知や公募要領、所属機関の案内で確認してください。

Q. プレプリントを公開すれば足りますか。

義務化の対象は査読付きの論文です。査読前の原稿だけでは足りず、査読済みの論文(著者最終稿)を公開する必要があると、大学図書館の資料は説明しています。Jxivでは、査読後の論文も、学術出版社などの許諾が得られれば公開できます(具体的方策の注)。

Q. 所属機関に機関リポジトリがない場合は。

NII RDC上で検索できる分野別リポジトリ、JxivやJSTのリポジトリ、出版社の電子ジャーナル上での即時OAなど、機関リポジトリ以外の方法でも対応できます。JSPSは、分野別のプレプリントサーバや所属機関のリポジトリがない場合に、Jxivを活用できるとしています。まずは所属機関の図書館に確認してください。

Q. 共著論文や分担者の論文はどうなりますか。

対象となる受給者には研究分担者など研究費を受給するすべての人が含まれ、具体的な実施方法は研究代表者の統括のもとで適切に行うとされています。共著者との役割分担は、事前に決めておくと実績報告で迷いません。

Q. 掲載後3か月以内に登録できなかったらどうなりますか。

3か月程度は「望ましい」目安です。エンバーゴなしの雑誌で、掲載手続きに時間を要して実績報告の時点で未実施の場合の扱いは、具体的方策の注に示されています。エンバーゴなどで難しい場合は、実績報告で理由を選択して報告します。

まとめ

即時オープンアクセスの義務化は、2025年度に新たに公募された科研費、JST戦略的創造研究推進事業(一部を除く)、JST創発的研究支援事業、AMEDの革新的先端研究開発支援事業が対象です。対象になるのは、査読付きの電子ジャーナルに掲載された論文と、公表が求められている根拠データです。機関リポジトリでの公開が原則ですが、ほかの情報基盤や出版社サイトでの即時OAでも対応でき、APCは必須ではありません。「3か月程度」は国の具体的方策が示す目安で、実績報告で実施有無と識別子を記載します。投稿前に、投稿先のOAポリシーを確認しておくことが実務上のポイントです。

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参考資料

上記の内容は2026年10月10日に公開資料で確認しました。制度の対象範囲や運用は更新される可能性があります。採択課題ごとの正式な取扱いは、所属機関の図書館・URA部門、または資金配分機関の最新の公募要領でご確認ください。

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