博士論文の章構成を比べた図。左は本体の章数の分布で、日本の大学27件は中央値6章(4〜11章)、TU Delft 12件は中央値7章(5〜9章)。右は本体ページの配分(合計に対する割合)で、日本の大学は序論11%、背景・手法26%、研究・解析・結果51%、考察・結論12%。TU Delftは序論9%、背景・手法4%、研究80%、考察・結論6%。

博士論文を英語で書く|章構成と公表論文の扱い方

英語で書く博士論文の章構成は、序論、背景の章、研究の章、総合的な考察・結論の順が基本ですが、真ん中の部分は論文によって大きく変わります。1つの研究を書き下ろす「モノグラフ型」では、解析と結果が中心です。複数の研究を章として並べる「論文集約型」では、研究ごとに章が立ち、多くは論文が元になります。どちらの型を使うか、章を何本にするかは、大学・研究科が定めます。

CC BY 4.0で公開されている日本の大学の博士論文27件では、本体の章数の中央値は6章、研究の章が本体ページの51.2%でした。TU Delftの2025年の博士論文(CC BY)12件では、中央値は7章、研究の章が80.2%でした。どちらも件数が少なく、無作為に選んだものではありません(日本側27件のうち24件は衝突実験の物理学です)。実在の博士論文の姿を示すだけで、ご自身の研究科の要件を示すものではありません。

本記事は博士論文の章構成に絞ります。課程博士・論文博士の違いは課程博士・論文博士とは、修士論文の構成と分量は修士論文を英語で書く、英文要旨は学位論文の英文要旨の書き方をご覧ください。

1. まず確認:章構成を決めるのは大学と研究科です

学位規則(昭和28年文部省令第9号。e-Gov法令検索の現行条文、令和4年10月1日施行の版、2026年10月9日閲覧)の第4条は、博士の学位を、大学院を置く大学が博士課程を修了した者に授与すること(第1項)と、大学の定めるところにより博士論文の審査に合格し、博士課程修了者と同等以上の学力を有すると確認された者に授与できること(第2項)を定めています。第13条は、論文審査の方法など学位に関して必要な事項を、大学が定めて文部科学大臣に報告するとしています。本記事の作成で確認した第4条・第8条・第9条・第13条には、章の数、語数、論文集約型を認めるかどうかの記載はありませんでした。

つまり、章構成は大学・研究科の規程と指導教員の方針で決まります。記事課程博士・論文博士とはでは、早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科の手引き(関係論文を寄せ集めただけの学位論文は認めない)と、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の手引き(掲載済みまたは受理済みの原著論文に基づく)という、正反対の公開例を紹介しています。

編集上の助言(大学や研究科の規則ではありません)

書き始める前に、(1) ご自身の研究科が求める型(モノグラフ型か論文集約型か)、(2) 外部の英文校正を使ってよいか、使う場合にどう謝辞へ書くか、を研究科の規程と指導教員に確認してください。章の設計は、研究計画の段階から考えておくと後で楽になります(研究計画書の書き方)。

2. 2つの型:モノグラフ型と論文集約型

モノグラフ型(1つの研究の書き下ろし) 論文集約型(複数の研究を章にする)
真ん中の章 背景・方法・解析・結果が、1つの研究として続く 研究ごとの章が複数並び、多くは論文が元になる
つなぎの文章 論文のために一度だけ書く 総合序論・総合考察と、章をつなぐ文章を新しく書く
文体 著者1人、1つの用語体系 章ごとに共著の「we」や掲載誌の表記が残ることがある
校正で起こりやすい問題 長い文書全体での表記ゆれ 別々の雑誌で編集された章どうしの表記ゆれ
追加の手続き 通常は少ない 公表済み本文の利用許諾、共著者の同意、各章の貢献の記載

編集上の助言: 最初に型を決めてください。型によって、序論と結論が果たすべき仕事が変わります。

文献では、米国の看護学博士課程を対象とした2018年の全国調査(Graves ら、PMID 29517152)が、適格な121機関のうち79機関(66.7%)から有効回答を得て、59%が両方の型を、11%が論文型のみを、24%が従来型のみを提供していると報告しています。また、1校の看護学博士課程の修了者113人を調べた2019年の後ろ向き研究(Smaldone ら、PMID 31313486)では、80人(70.8%)が従来型、21人が論文型(publication)、12人が小研究型(substudy)でした。いずれも米国の看護学のデータで、日本のどの研究科にも当てはまるものではなく、「2つの型が並存している」ことを示す例として挙げています。

3. 実在の博士論文39本で見る章構成(R)

データと方法

  • 日本の大学27件: Zenodoの博士論文(各レコードにライセンスCC BY 4.0と表示、2026年10月9日にAPIで確認)。筑波大学9件、東京大学8件(原子核研究センターを含む)、広島大学5件、京都大学3件、東京工業大学1件、北海道大学1件。発行年は2002〜2026年(Zenodoのレコードの日付)、すべて英語の論文です。27件のうち24件は題名が衝突実験(原子核・高エネルギー物理)で、残りは天体物理2件と土壌微生物学1件です。
  • 比較用の論文集約型12件: TU Delft Repositoryの2025年の博士論文(各ページにCC BYと表示)。DataCiteで「doi:10.4233* AND types.resourceTypeGeneral:Dissertation AND publicationYear:2025」を検索(全523件)し、DOI順の先頭100件の各ページを確認したところ13件がCC BYで、うち1件は公開猶予(エンバーゴ)中のため除き、12件を使いました(2026年10月9日取得)。
  • 数え方: 目次から本体の章(最初の章から最後の章まで)を特定し、前付・付録・章末の参考文献を除いてpdftotextで語数を数えました。ページ数はPDFのページです。語数には図表の見出しや式も混ざるため概数です。章の役割は題名から「序論」「背景・手法・実験」「研究・解析・結果」「考察・結論」の4つに分類し、一部は手作業で修正しました。

Rの結果(R 4.3.3、ggplot2 4.0.3)

日本の大学(N=27) TU Delft(N=12)
本体の章数 中央値(範囲) 6(4〜11) 7(5〜9)
本体のPDFページ数 中央値(範囲) 121(86〜200) 134(114〜208)
本体の語数 中央値(範囲) 33,222(17,671〜57,707) 48,650.5(31,857〜80,558)
「研究」とした章の数 中央値(範囲) 2(2〜6)。27件中21件が2章 4.5(3〜6)
独立した背景・手法の章がない論文 0件(27件中) 9件(12件中)
ページ配分(全論文の合計に対する%):序論/背景・手法/研究/考察・結論 11.1/26.1/51.2/11.6 9.1/4.4/80.2/6.2

参考:同じデータの語数で配分を計算し直すと(Pythonでの確認で、Rの出力ではありません)、日本の大学は12.9/23.3/50.5/13.3%、TU Delftは7.6/4.7/81.4/6.2%で、ページ配分とほぼ同じでした。

博士論文の章構成を比べた図。左は本体の章数の分布で、日本の大学27件は中央値6章(4〜11章)、TU Delft 12件は中央値7章(5〜9章)。右は本体ページの配分(合計に対する割合)で、日本の大学は序論11%、背景・手法26%、研究・解析・結果51%、考察・結論12%。TU Delftは序論9%、背景・手法4%、研究80%、考察・結論6%。
図1. 博士論文の本体の章数(左、点が論文1件)と、章の役割別のページ配分(右)。データ:Zenodo(日本の大学の博士論文27件、CC BY 4.0)、TU Delft Repository(2025年、CC BY 12件)、章の役割は題名から分類(編集者の判断)、R 4.3.3。© editverse.com

読み方: 日本側の27件は、背景や装置・方法の章に26%のページを使い、研究の章は51%でした。TU Delftの12件は、独立した背景の章がほとんどなく(4%)、研究の章が80%を占めています。

この結果の読み方

  • 日本側で「研究」とした章は、多くが1つの測定の「解析」と「結果」です。 27件中21件は研究の章が2つで、章の題名は「Data Analysis」と「Results」のような組み合わせが目立ちます。つまり1つの研究を書き下ろすモノグラフ型で、前に背景や方法の章が置かれています。研究が2つあるという意味ではありません。
  • TU Delftの12件は、研究の章が3〜6本(中央値4.5)あり、独立した背景の章がない論文が9件でした。 研究の章ごとに序論と方法を持てるため、共通の背景を短くできるからだと考えられますが、これは配分からの推測で、各論文の事情は確認していません。
  • 序論と考察・結論を合わせたページ配分は、日本側が22.7%、TU Delftが15.3%でした(Rの出力の合計)。 型が違っても、序論と結論の仕事は、全体の見取り図と、冒頭の問いへの答えです。

この分析の限界

  • 件数が少なく(39件)、無作為抽出ではありません。日本側は24件が同じ分野(衝突実験)で、人文社会科学や臨床系の博士論文は含まれません。一般化しないでください。
  • 日本側は2002〜2026年の幅があり、各大学の現在の規程を反映していません。
  • 章の役割は題名からの分類で、語数はPDFからの抽出による概数です。TU Delftのページ数はすべて偶数で、両面印刷の体裁(白紙ページを含む)が影響している可能性があり、ページ配分は概算です。

再現用のRコード(簡略版)です。章ごとの数値は、本記事末尾の付録A・Bの表にあります。

d <- read.csv("thesis_pages_by_role.csv")  # id, group(JP/TUD), n_ch, pg_intro, pg_bg, pg_res, pg_conc
d$pages <- d$pg_intro + d$pg_bg + d$pg_res + d$pg_conc
sapply(split(d$n_ch, d$group), median)          # 章数の中央値
roles <- c("pg_intro", "pg_bg", "pg_res", "pg_conc")
tot <- sapply(split(d[, roles], d$group), colSums)
round(100 * prop.table(tot, 2), 1)              # 本体ページの配分(%)

4. 章ごとの役割と、章をつなぐ工夫(編集上の助言)

以下は、上のデータと一般的な執筆の考え方に基づく編集上の助言で、大学や研究科の規則ではありません。

章 役割 論文集約型で気をつけること
序論 論文全体が答える1つの問いを示す 各研究の章がどうつながるかを示す「地図」も兼ねる(総合序論)
背景・手法 モノグラフ型では、研究の土台を説明する 各研究の章に方法がある場合、共通の背景は短くできる(TU Delftでは4.4%)
研究の章 1章につき1つの主張 章の冒頭に、元の論文の状況(公表済み・受理・投稿中・未投稿)と各著者の貢献を書く
総合考察・結論 章をまたいで、序論の問いに答える 各論文のAbstractを並べただけにしない
要旨 審査委員と公表用の要約 日本語・英語の要旨は学位論文の英文要旨の書き方を参照

章どうしをつなぐ

  • つなぎの文を置く。 各研究の章の冒頭か末尾に、「前の章で分かったこと、この章の問い」を2〜3文で書きます。
  • 用語表を1つ作る。 同じものを章ごとに違う名前で呼んでいないかを、通して確認します。
  • 相互参照の書式をそろえる。 「Chapter 3」「Section 3.2」「Figure 3.1」のように、章番号つきの形に統一します。公表論文の図表番号(Figure 1など)をそのまま使うと、章をまたいで重なります。
  • 統計の書き方も章をまたいで確認する。 検定や効果量の報告の形式が章でばらばらにならないよう、学位論文の統計:解析計画の立て方と報告のしかたも参考にしてください。

5. 公表済みの論文・共著者・著作権の確認

論文集約型では、すでに公表された論文を章にします。以下は、2026年10月9日に開いた公開ページの内容です。いずれも例であり、日本全体や他の出版社に当てはまるものではありません。出版社の案内は更新されるため、必ず最新のページを確認してください。

資料 述べていること
Elsevier(サポートページ、2026年5月15日更新と表示) 自分の掲載論文を自分の学位論文に全体または一部含める場合、Elsevierへの書面での許諾は不要。条件は、学位論文を商業的に出版しないこと、出典を明記すること。大学リポジトリに載せる場合、掲載論文は学位論文に埋め込み、単独でダウンロードできない形にすること
Springer Nature(著者向けFAQ) 自分の学位論文でVersion of Recordの全部または一部を再利用する権利がある。条件は、「Reproduced with permission from Springer Nature」の記載、引用、Version of Recordに限ること、共著者・第三者の事前の同意を著者の責任と費用で取得すること。ライセンス契約(LTPまたはCTS)で個別の権利を確認する
熊本大学(インターネット公表の手引きPDF) 著作権者が執筆者本人(共同執筆者を含む)の場合は出版社への確認なしでリポジトリ登録できる。出版社が著作権者の場合は、出版社版・著者版・邦訳版・加筆版のどれを登録するかに応じて確認が必要。許諾が得られない場合は「やむを得ない事由」として要約のみの公表になる。共著者の同意については、この資料には記載がない
東京大学(「博士論文と著作権」第3.2版、表紙の日付は2016年1月18日) 共著論文を含む博士論文のインターネット公表には、共著者全員の同意が必要で、同意書(Letter of Consent and Acceptance)で取得する。掲載論文については、著作権移転の有無と範囲、学位論文への利用可否、リポジトリでの公開可否の3点を確認する。出版社版は不可で著者最終原稿のみ許可する出版社が多い
オックスフォード大学MPLS部門(Statement of Authorship、海外の例。WebFetchで閲覧、日付の表示なし) 論文として提出する各章の末尾に、その論文の書誌情報、候補者の貢献の記述、候補者と指導教員の署名を付ける様式。論文内にすでに貢献の記述がある場合は不要とされている

TU Delftの12件では、公表の明示はどうなっていたか

各論文の研究の章の冒頭を目視で確認した範囲では、すべての研究の章が「この章は論文として公表した(または元にしている)」旨を明示していたのは12件中6件(うち1件は論文全体の貢献記述ページで示していました)、一部の章のみが3件、章の冒頭では確認できなかったものが3件でした。確認できなかった3件も、前付などほかの箇所に記載がある可能性があります。日本の27件では、この点は調べていません。各論文の内訳は付録Bにあります。

編集上の助言(大学や出版社の規則ではありません):章と論文の対応表を1枚作る

列は、章番号/元の論文の書誌情報/状況(公表済み・受理・投稿中・未投稿)/出版社の学位論文での再利用条件(上の表のような公式ページの日付つき)/共著者と各自の貢献/同意の取得の有無/研究科への確認事項、が使いやすいと考えます。リポジトリ公表(博士論文の機関リポジトリ公表)、類似度チェックの運用(学位論文の剽窃チェック)、審査の流れ(博士論文の審査・公聴会の流れ)にもこの表が役立ちます。

6. 章ごとの英文校正のポイント(編集上の助言)

以下は、校正の現場で確認する項目の例で、大学や学会の規則ではありません。

  1. 綴りと表記を論文全体で1つに決める。 公表論文を集める場合、掲載誌ごとに英国式・米国式の綴りや用語が違うことがあります。
  2. 略語の定義を決める。 章が単独で読まれる可能性がある論文集約型では、各章の初出で定義し、巻頭に略語表を置く方法があります。研究科の書式に従ってください。
  3. 人称の方針を決める。 共著の章は「we」、総合序論と総合考察は「I」や受動態など、章ごとの扱いを指導教員と相談して統一します。
  4. つなぎの文は現在形で書く。 一例として、「Chapter 3 shows that …」のように、章を参照する文は現在形にし、過去の研究の記述(過去形)と区別します。
  5. 相互参照と図表番号を点検する。 公表論文から移した図表の番号と本文中の参照が、章番号つきの形になっているかを確認します。
  6. 参考文献の形式をそろえる。 章末にまとめるか巻末にまとめるか、引用スタイルは何かを研究科の様式で決めます。
  7. 総合序論・総合考察は新しく書き下ろす。 各論文のAbstractの継ぎはぎにならないよう、冒頭の問いに沿って書きます。

7. 修士論文との違い

修士論文(記事1478) 博士論文(本記事)
標準の構成 序論・先行研究・方法・結果・考察・結論の流れを解説 この流れが1回(モノグラフ型)か、研究ごとに複数回(論文集約型)か
分量 研究科の規定で、6,000語以上から15,000〜24,000語までの例 今回の実データの本体語数の中央値は、日本27件で33,222、TU Delft 12件で48,650.5(規定ではありません)
論文との関係 学位論文の章からジャーナル論文へ(出版を見据えて書く) すでに公表した論文を章にする場合の許諾・共著者の同意・貢献の記載
公表 本記事では扱いません 博士論文は学位規則第9条で全文の公表が定められている(詳しくは機関リポジトリ公表の記事)

章をまたいだ表記の統一を、第三者の目で確認したい方へ

Editverse Japanの学位論文英文校正は、49,800円(2026年10月9日に商品ページで確認)で、博士論文・修士論文の英文校正、論文全体の一貫性チェック、専門用語の統一、章ごとのフィードバックを、変更履歴つきのWordでお届けします。商品ページには、納期の目安が5万語まで7〜10営業日、10万語まで14〜21営業日と記載されています。序論のみ・考察のみなど章単位のご依頼も可能です。

研究、解析、解釈、結論は、ご自身のものです。私たちは英語、表記の統一、構成の確認でサポートします。外部の英文校正の利用可否と謝辞の書き方は、研究科の規程と指導教員のご了承に従ってください(指導教員・審査委員への英文校正済み原稿の出し方)。本サービスは審査の合格を保証するものではなく、特定の大学の書式要件の充足を保証するものでもありません。

無料お見積もり:お問い合わせ。学位論文サポートの全体像:学位論文・修士博士論文サポート。

まとめ

  • 章構成は、学位規則ではなく、大学・研究科の規程と指導教員の方針で決まります。書き始める前にモノグラフ型か論文集約型かを確認してください。
  • CC BY 4.0の日本の大学の博士論文27件では、本体の章数の中央値は6章(4〜11)、研究の章が本体ページの51.2%でした。研究の章の多くは1つの測定の「解析」と「結果」です。
  • TU Delftの2025年の博士論文12件(CC BY)では、中央値7章(5〜9)、研究の章が3〜6本(中央値4.5)で、ページの80.2%を占め、独立した背景の章がない論文が9件でした。
  • これらは件数が少なく無作為抽出ではないため、一般化できません。日本側は24件が同じ分野(衝突実験)です。
  • 公表済みの論文を章にするときは、出版社の再利用条件、共著者の同意、各章の貢献の記載を、章と論文の対応表で管理し、研究科に確認してください。

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よくある質問

Q1. 博士論文を英語で書く場合、章構成に決まりはありますか?

全国共通の章構成の決まりは、本記事で確認した学位規則(第4条、第8条、第9条、第13条)には見つかりませんでした。第13条は、論文審査の方法などを各大学が定めて文部科学大臣に報告するとしており、章構成は大学・研究科の規程と指導教員の方針に従います。

Q2. モノグラフ型と論文集約型はどちらがよいですか?

研究科・分野・指導教員が決めることで、どちらがよいとは言えません。今回の実データでは、日本の大学の27件は研究の章が本体ページの51.2%、TU Delftの12件は80.2%でした。米国の看護学博士課程の調査(PMID 29517152)では、回答79校のうち59%が両方の型を、11%が論文型のみ、24%が従来型のみを提供していました。

Q3. 公表済みの論文を学位論文の章として使うのに、出版社の許諾は必要ですか?

出版社と契約によって異なります。例として、Elsevierは自分の掲載論文を学位論文に含める場合に書面での許諾は不要とし、Springer Natureは自分の学位論文でVersion of Recordを再利用する権利を認めています(いずれも条件あり、2026年10月9日閲覧)。ご自身の論文の契約と出版社の最新の案内、研究科の規程を確認してください。

Q4. 共著論文を章にするとき、共著者の同意は必要ですか?

東京大学の「博士論文と著作権」(第3.2版)は、共著論文を含む博士論文のインターネット公表には共著者全員の同意が必要としています。Springer Natureは、共著者などの事前の同意を著者の責任で取得するよう求めています。必要な手続きは大学ごとに異なるため、研究科と指導教員に確認してください。

Q5. 章ごとに英文校正を依頼できますか?

学位論文英文校正の商品ページ(2026年10月9日確認)には、序論のみ・考察のみなど章単位の依頼も可能と記載されています。ただし、外部の英文校正を使えるか、どう謝辞に書くかは研究科の規程と指導教員の了承に従い、研究と結論はご自身のものです。

参考資料

  • Graves JM, Postma J, Katz JR, Kehoe L, Swalling E, Barbosa-Leiker C. A National Survey Examining Manuscript Dissertation Formats Among Nursing PhD Programs in the United States. J Nurs Scholarsh. 2018 May;50(3):314-323. doi:10.1111/jnu.12374. PMID: 29517152。(抄録を確認。esummaryで書誌を照合)
  • Smaldone A, Heitkemper E, Jackman K, Joanne Woo K, Kelson J. Dissemination of PhD Dissertation Research by Dissertation Format: A Retrospective Cohort Study. J Nurs Scholarsh. 2019 Sep;51(5):599-607. doi:10.1111/jnu.12504. PMID: 31313486。(抄録を確認。esummaryで書誌を照合)
  • 学位規則(昭和28年文部省令第9号)第4条・第8条・第9条・第13条。e-Gov法令検索:https://laws.e-gov.go.jp/law/328M50000080009(2026年10月9日閲覧)。
  • Elsevier. Can I use material from my Elsevier journal article within my thesis/dissertation?:サポートページ(2026年10月9日閲覧、ページの更新日は2026年5月15日と表示)。
  • Springer Nature. Author FAQs(rights and permissions):著者向けFAQ(2026年10月9日、WebFetchで閲覧)。
  • 熊本大学. インターネット公表の手引き(PDF):PDF(2026年10月9日閲覧、作成年月の記載なし)。
  • 東京大学. 博士論文と著作権(第3.2版):PDF(2026年10月9日閲覧、表紙の日付は2016年1月18日)。
  • University of Oxford, MPLS Division. Statement of Authorship template:ページ(2026年10月9日、WebFetchで閲覧)。
  • Zenodo(日本の大学の博士論文27件、各レコードのライセンスはCC BY 4.0):https://zenodo.org/。レコードは付録Aのとおり(2026年10月9日取得)。
  • TU Delft Repository(2025年の博士論文12件、CC BY):https://repository.tudelft.nl/。DataCite REST API(https://api.datacite.org/dois)の検索は、付録Bのとおり(2026年10月9日取得)。
  • R Core Team. R 4.3.3; ggplot2 4.0.3; patchwork; ragg。

各大学の学位規程、書式、公表の扱いは、研究科・専攻・年度により異なります。本記事の例は2026年10月9日時点で公開されていた資料に基づくもので、正式な要件は必ずご自身の研究科の最新の規程と指導教員に確認してください。

付録A:分析した日本の大学の博士論文27件

ページ数はPDFの本体ページ(序論/背景・手法/研究/考察・結論の別)です。いずれもZenodoのレコードで、ライセンスはCC BY 4.0です。本体語数は章末参考文献などを除いた概数です。

ID 大学 年 Zenodo(DOI) 章数 序論 背景・手法 研究 考察・結論 本体語数
JP01 東京大学 2007 10.5281/zenodo.3813479 8 6 48 72 18 47,715
JP02 東京大学 2013 10.5281/zenodo.4051845 8 4 48 86 2 30,560
JP03 東京大学 2002 10.5281/zenodo.4067490 8 8 60 74 20 46,107
JP04 広島大学 2004 10.5281/zenodo.4243314 7 11 44 55 3 28,061
JP05 筑波大学 2005 10.5281/zenodo.4267572 6 19 26 35 28 30,548
JP06 東京工業大学 2006 10.5281/zenodo.4283251 6 4 64 59 2 26,563
JP07 筑波大学 2007 10.5281/zenodo.4285750 6 13 15 55 38 31,379
JP08 京都大学 2008 10.5281/zenodo.4294380 11 13 28 78 4 38,295
JP09 東京大学 2008 10.5281/zenodo.4297145 8 4 72 86 38 57,707
JP10 筑波大学 2009 10.5281/zenodo.4331129 6 17 10 51 21 33,222
JP11 筑波大学 2009 10.5281/zenodo.4345833 6 22 16 54 19 33,143
JP12 京都大学 2011 10.5281/zenodo.4395388 6 26 35 59 1 40,544
JP13 東京大学 2011 10.5281/zenodo.4404691 8 4 54 56 10 31,606
JP14 広島大学 2012 10.5281/zenodo.4409474 4 27 18 64 0 23,049
JP15 広島大学 2012 10.5281/zenodo.4412051 5 16 22 58 2 20,625
JP16 筑波大学 2013 10.5281/zenodo.4427188 7 19 29 54 36 50,891
JP17 筑波大学 2014 10.5281/zenodo.4427617 6 28 14 55 24 39,324
JP18 筑波大学 2014 10.5281/zenodo.4430103 6 3 30 90 3 20,129
JP19 東京大学 2014 10.5281/zenodo.4431088 7 6 54 88 12 42,278
JP20 筑波大学 2015 10.5281/zenodo.4443454 6 20 13 40 30 35,858
JP21 京都大学 2015 10.5281/zenodo.4459762 8 3 63 51 12 35,522
JP22 筑波大学 2016 10.5281/zenodo.4484726 6 25 16 54 31 36,476
JP23 広島大学 2021 10.5281/zenodo.4607871 5 31 16 59 2 36,248
JP24 広島大学 2019 10.5281/zenodo.4745975 8 18 15 118 15 50,187
JP25 東京大学 2009 10.5281/zenodo.59438 7 4 16 64 2 29,019
JP26 東京大学 2022 10.5281/zenodo.8267162 8 20 28 56 14 25,280
JP27 北海道大学 2026 10.5281/zenodo.18500548 6 4 27 56 4 17,671

付録B:分析したTU Delftの博士論文12件

ライセンスはCC BYです。「公表の明示(章数)」は、研究の章の冒頭に論文としての公表を明示していた章数と、確認した章数です。

ID 題名 DOI 章数 序論 背景・手法 研究 考察・結論 本体語数 公表の明示(章数)
TU01 Physically Recurrent Neural Networks uuid:2b66e341 7 18 0 178 12 66,021 2/5
TU02 Hull Form Design Optimization uuid:2fee1b23 6 8 36 82 2 48,263 4/4
TU03 Bridging Simulation and Experiment in Nanoscience with AI uuid:4be6e7b1 9 16 22 130 8 48,214 5/5
TU04 Neuromorphic Autopilot for Drone Flight uuid:4e8503ea 7 16 0 102 10 34,709 5/5
TU05 From Plants to Plastic Products uuid:4f0fbdac 6 12 0 102 12 35,465 4/4
TU06 Casimir Force On-Chip with STM uuid:56c0bf01 6 12 0 164 12 62,053 1/4
TU07 Adaptive Ultrasound Neuroimaging uuid:606050e5 7 18 0 88 14 45,633 2/4
TU08 The Signals We Send uuid:6144bc3f 7 14 0 120 10 64,799 5/5(論文全体の記述)
TU09 Correct Translation between Weak Memory Model Architectures uuid:8dc4a658 8 16 20 84 4 49,038 0/6(確認できず)
TU10 Meta(llic) Clay uuid:ae72c06d 5 8 0 96 10 31,857 0/3(確認できず)
TU11 Learning-based control under constraints uuid:c3a22206 8 10 0 148 6 80,558 6/6
TU12 Through-Screen Computing uuid:d904b49f 6 12 0 118 10 58,818 0/4(確認できず)

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