UCバークレー大学院の出願データ(6学科、n=4,526)。全学科を合算すると男性の合格率44.5%・女性30.4%で粗オッズ比(男/女)は1.84(95%信頼区間1.62〜2.09)だが、学科ごとに見ると合格率の差は小さく、学科で調整したオッズ比は0.90(95%信頼区間0.77〜1.06)

交絡因子とは|調整の方法と論文・査読での書き方【R実例つき】

交絡因子(confounder)とは、曝露(要因)とアウトカム(結果)の両方に関連し、その結果、曝露とアウトカムの関連を、本来知りたい効果とは違う形に見せてしまう因子のことです。STROBEの解説論文は、交絡を「事実としては正しい関連を生むが、背景にある、考慮されていない何らかの因子が曝露とアウトカムの両方に関連しているため、因果的には解釈できないもの」と説明しています[文献2]。論文で交絡に対処する実務の流れは、次の4点です。(1) 調整する変数は、P値を見る前に、原因についての専門知識から選ぶ。(2) 未調整の推定値と調整後の推定値を並べて報告する。(3) どの変数を、なぜ、どの方法で調整したかを書く(STROBEの項目12aと16a)。(4) 残余交絡が残りうることを率直に述べる。

本記事では、Rに付属する2つの実データを使い、調整が推定値に何をするかを示します。調整すると効果がかえって大きくなる、直感に反するケースも含みます。検定の選び方(統計検定の選び方)、P値(P値の正しい解釈)、結果報告全般は、あえて説明し直しません。扱うのは、観察研究の解析のうち交絡の部分だけです。

1. 交絡因子とは|媒介変数・コライダー・効果修飾因子との違いと扱い

「測定した変数はすべて調整する」は、安全な既定の方法ではありません。変数が因果構造のなかでどの役割を持つかによって、調整が助けになるか、害になるかが決まります。STROBEの解説論文(Vandenbroucke 2007)は、調整に含める変数の判断は「因果関係についての知識、または明示的な仮定に導かれるべき」であり、「不適切な判断は、たとえば曝露と疾患の因果経路上にある変数を含めることによって(中間変数が効果のどれだけを担うかを評価することが目的の場合を除く)、バイアスを生じうる」と述べています[文献2]。以下、英語文献からの引用はすべて当社訳です。

役割 平たく言うと 通常の扱い 出典
交絡因子(共通原因) 曝露とアウトカムの両方に影響し、曝露より前に生じる 調整する(または限定・マッチングで対処する) STROBE解説論文 Box 5[文献2]、VanderWeele 2019[文献4]
媒介変数(中間変数) 曝露 → 媒介変数 → アウトカム の経路上にある 総効果を知りたい場合は調整しない。効果のどれだけを担うかを調べたいときだけ調整する STROBE項目16a[文献2]
コライダー(合流点) ほかの2つの変数の共通の結果 調整しない。条件づけると、閉じていたバイアスの経路を開くことがある VanderWeele 2019(図「A–U1–L–U2–Y」の議論)[文献4]
操作変数 曝露には影響するが、アウトカムへのほかの経路を持たない 調整する変数の集合から除く VanderWeele 2019[文献4]
未測定の交絡因子の代理変数 未測定の共通原因の代わりになる、測定済みの変数 通常は、注意しながら含める価値がある VanderWeele 2019[文献4]
効果修飾因子 曝露の効果が、その水準によって異なる 交絡とは別の概念(同じ変数が交絡因子と効果修飾因子を兼ねることもある)。層ごとの推定値、または交互作用項を報告する STROBE項目7・12b[文献2]

VanderWeeleは、交絡因子の選択に関する原則を次のようにまとめています。「曝露の原因、アウトカムの原因、またはその両方の原因である共変量はそれぞれ調整する。このうち、操作変数と分かっている変数は除く。曝露とアウトカムの共通原因である未測定の変数については、その代理変数を共変量として含める」[文献4]。最初の部分を選言的原因基準(disjunctive cause criterion)と呼んでいます。各共変量が曝露やアウトカムの原因かどうかの知識は必要ですが、完全な因果ダイアグラムまでは要りません。

こうした仮定を書き出す標準的な道具が、因果ダイアグラム(有向非巡回グラフ、DAG)です(Greenland, Pearl, Robins 1999)[文献10]。Tennantらは、DAGを使った健康研究の論文234本(1999〜2017年)を調べ、目標とする推定対象(estimand)を報告していたのは21%、DAGから導かれる調整変数の集合を報告していたのは48%にとどまることを示しました[文献8]。「なぜこの共変量なのか」という査読者の質問は、すでに公表された多くの論文が答えていない問いだと言えます。

研究者の役割。どの変数がどの変数の原因かは、ご自身の研究の生物学、臨床の実際、データが生まれる過程についての判断です。当社は、因果ダイアグラムを描く、確認する、解析コードに落とし込む、というところまでお手伝いできますが、因果の仮定と解釈は著者の責任です。

2. 交絡の実例|バークレーの入試データ(シンプソンのパラドックス)

Rの datasets パッケージにある UCBAdmissions は、1973年のカリフォルニア大学バークレー校の大学院について、応募者数の多い6学科への出願を、合否と性別で分類したデータです(応募者4,526人)。Bickel、Hammel、O’Connell(Science 1975)は、このデータを使い、全体を合算した数字は「女性応募者に対するバイアスという、明瞭だが誤解を招くパターン」を示しており、それは主として「男女どちらの応募者にとっても入りにくい学科に女性が出願する傾向」を反映していると示しました[文献1]。

構造は教科書的な交絡です。学科は曝露(男女で出願先の学科が違う)とも、アウトカム(学科によって合格させる割合が違う)とも関連しています。

# R 4.3.3, packages: datasets (UCBAdmissions), stats (glm, mantelhaen.test)
d <- as.data.frame(UCBAdmissions)
d$Gender <- relevel(d$Gender, "Female")          # women = reference
crude <- apply(UCBAdmissions, c(1, 2), sum)
print(crude)

m_crude <- glm(Admit == "Admitted" ~ Gender,        data = d, weights = Freq, family = binomial)
m_adj   <- glm(Admit == "Admitted" ~ Gender + Dept, data = d, weights = Freq, family = binomial)
or <- function(m, term) round(exp(c(OR = unname(coef(m)[term]), confint.default(m)[term, ])), 2)
or(m_crude, "GenderMale")      # crude OR, men vs women
or(m_adj,   "GenderMale")      # department-adjusted OR (logistic regression)

mh <- mantelhaen.test(UCBAdmissions)               # Mantel-Haenszel, stratified by Dept
c(MH_OR = round(unname(mh$estimate), 3), lower = round(mh$conf.int[1], 3),
  upper = round(mh$conf.int[2], 3), p = round(mh$p.value, 3))

出力(R 4.3.3。Wald型95%信頼区間は confint.default による):

          Gender
Admit      Male Female
  Admitted 1198    557
  Rejected 1493   1278

    OR  2.5 % 97.5 %          # crude
  1.84   1.62   2.09
    OR  2.5 % 97.5 %          # adjusted for department
  0.90   0.77   1.06

MH_OR lower upper     p
0.905 0.772 1.060 0.232
UCバークレー大学院入試データ(6学科、4,526人)で、全体を合算すると男性44.5%・女性30.4%が合格し未調整オッズ比は1.84(95%信頼区間1.62〜2.09)だが、学科ごとに見ると合格率は近く、学科調整後のオッズ比は0.90(95%信頼区間0.77〜1.06)
図1. 左:6学科を合算すると、男性応募者2,691人の44.5%、女性応募者1,835人の30.4%が合格(未調整オッズ比、男性対女性、1.84、95%信頼区間1.62〜2.09)。右:学科ごとに見ると合格率は近く、学科で調整したオッズ比は0.90(95%信頼区間0.77〜1.06)。データ:datasets::UCBAdmissions、R 4.3.3 © editverse.com

図の読み方:左の合算では男女の合格率に大きな開きがありますが、右のように同じ学科のなかで比べると、開きは小さくなります。合算の差は、男女が出願した学科の違いに大きく引っ張られていたことが分かります。

一言でいうと:未調整の比較では、男性の合格のオッズは女性の約1.8倍でした(オッズ比1.84。合格率は44.5%対30.4%で、リスク比は約1.5ですので、オッズ比を「何倍起こりやすい」と読まないでください)。同じ学科のなかで応募者を比べると、関連はもう見られなくなります(0.90、95%信頼区間は1を含む)。

この例が示すことと、示さないこと

  1. 調整後が、自動的に「真実」になるわけではありません。「同じ学科に出願した、同じ資質の応募者は、同じ合格のしやすさを持つか」を問うなら、学科内の比較は適切な比較です。Bickelらが述べるとおり、合否の判断は各学科が自律的に行っているためです[文献1]。一方、女性がどの学科に出願するかという経路も含めた、性別が合否に及ぼす総効果を問うなら、学科は媒介変数になり、未調整の比較は別の問いに答えることになります。どちらを問うべきかは、データからは分かりません。決めるのは因果の問いです(STROBE項目16a、前述)[文献2]。Bickelらは、全体を合算したときの偏りを、入試委員会ではなく「教育制度のより早い段階での事前の選別」によるものとしています[文献1]。
  2. 効果はすべての学科で同じではありません。性別と学科の交互作用の尤度比検定は、逸脱度20.204、自由度5、P = 0.001でした。大部分は学科Aによるもので、学科Aの層別オッズ比(男性対女性)は0.35(95%信頼区間0.21〜0.58)、つまり女性のほうがよく合格していました。ほかの5学科のオッズ比は0.80〜1.22の範囲で、いずれも信頼区間が1を含みます。したがって、調整後の単一のオッズ比0.90は、不均一な層をまとめた要約です。mantelhaen.test は、ヘルプで、条件付き独立を「三元交互作用がないと仮定して」検定すると説明されています。論文では、要約値と並べて、学科ごとの推定値(たとえば補足表)を報告します。
  3. 原著論文と比べる。Bickelらはバークレーの全データを分析し、適切にまとめると「女性に有利な、小さいが統計的に有意なバイアス」があったと報告しています[文献1]。Rの6学科のサブセットでは、調整後のオッズ比は0.90で信頼区間が1を含むため、統計的に有意な差は再現されません。結論については原著論文を引用し、Rのデータは例示のためだけに使ってください。

3. 交絡因子への対処法

段階 方法 何をするか 注意点
デザイン 限定(restriction) 交絡因子を持たない人だけを対象にする(例:一方の性、一つの年齢層) 結果を一般化できる範囲が狭まる
デザイン マッチング 比較する群を、交絡因子について似たものにする 症例対照研究では、STROBEが「いくつかの不利益」があると述べ、方法論者は「日常的なマッチング」に反対して、各因子を慎重に検討するよう勧めています。そうした因子は「代わりに測定して、調整変数として使える」ためです。マッチングに使った変数は、解析で適切に考慮する必要があります[文献2]
解析 層別化(Mantel–Haenszel) 交絡因子の層ごとに関連を推定し、「すべての層にわたる加重平均として」まとめる(STROBE Box 5)[文献2] 各層に十分な人数が必要。層間の効果が共通だと仮定する(検証しない限り)
解析 多変量回帰(ロジスティック、Cox、線形) 交絡因子を共変量として含める モデルの特定:連続変数の交絡因子をカテゴリに分けると「残余交絡」が残りうる(STROBE項目11)[文献2]
解析 そのほかの方法(傾向スコア法、標準化、重みづけ) 交絡因子を一つのスコアにまとめる、またはサンプルを重みづけし直す 別の記事(傾向スコア)で扱います

査読者から指摘されることが多い点が2つあります。

  • 残余交絡。STROBEは、残余交絡を「制御しようとして不十分だったあとに残る交絡」と定義し、「交絡因子で調整した解析が、関連の『因果的な部分』を確立したと、読者は思い込むべきではない」と注意しています[文献2]。交絡因子の測定誤差そのものも、残余交絡を増やしうるとされています。
  • 調整は精度を犠牲にします。STROBE項目10は、多変量解析に交絡変数を含めると精度は「低下する」と述べています[文献2]。次の例で、その様子を信頼区間の幅として確認できます。

あわせて読みたい:測定されていない交絡への別の方法:メンデルランダム化解析

4. 調整する変数の選び方|なぜP値で選ばないのか

ありがちな方法として、候補の変数を一つずつアウトカム(または曝露)と照らし、P < 0.05のものを最終モデルに入れる、というやり方があります。これは勧められません。

あわせて読みたい:変数選択の実例比較(EPV・ステップワイズ・ブートストラップ)

  • STROBE(項目14aの解説)は、「P値は、解析でどの交絡因子を調整するかを選ぶ適切な基準ではない。アウトカムに強い影響を持つ交絡因子では、小さな差でも重要でありうる」と述べています。項目16aでも、「私たちや他の研究者は、統計的有意性の検定だけに基づいて交絡因子を選ぶことを勧めない」としています[文献2]。
  • Sun、Shook、Kay(1996)は、リスク因子を二変量のP値でふるい分けると、「アウトカムとリスク因子の関係が何らかの交絡因子によって交絡されており、その交絡因子が適切に制御されていないとき、重要になりうる変数を誤って棄却する」ことを示しています[文献7]。
  • MickeyとGreenland(1989)は、モンテカルロ・シミュレーションで選択基準を比較しました。調整すべきかどうかの最善の判断が自明でない場合には、変化量基準(change-in-estimate)が「優れている傾向にあり」、有意性にもとづく基準は「有意水準を従来よりずっと高く(0.20以上)設定すれば、許容できる性能を示しうる」と述べています[文献6]。

変化量基準の考え方は単純です。候補の変数を加えて、曝露の推定値がどれだけ動くかを見ます。有用な診断ですが、データ駆動であることに変わりはありません。交絡因子と、媒介変数やコライダーとを区別できないからです(これらを調整しても推定値は動きます)。Hernánら(2002)は、スローン先天異常研究(葉酸と神経管閉鎖不全)で、その危険を示しました。統計的な戦略を適用すると調整後オッズ比は0.80(95%信頼区間0.62〜1.21)でしたが、事前の因果的知識からは、調整後の値は妥当でないため、未調整のオッズ比0.65(95%信頼区間0.46〜0.94)を使うべきだと考えられました[文献5]。

変化量基準を使う場合に何を報告すべきかについて、STROBE項目16aは明確です。「含める根拠となるほど十分に重要だとみなした変化がどれだけかを報告することが重要」[文献2]。よく引用される「10%の変化」というカットオフは、慣習であって、法則ではありません。

現実的な手順

  1. アウトカムのデータを見る前に、候補の共変量を一覧にし、それぞれについて、曝露やアウトカムの原因になりうるか、曝露より前に生じるかを書き出します(DAGにすると明示できます)。
  2. この推論から、主たる調整変数の集合を事前に規定します(たとえば選言的原因基準に従う)。
  3. 追加のモデルを感度分析として実行し、そのように報告します(STROBE項目12eは、感度分析で調べうることの一つとして「どの交絡変数が調整に値するか」を挙げています)[文献2]。
  4. どの係数のP値が最も小さいかを見て、主たる集合を選ぶことはしません。

5. 実例2|調整すると関連が大きくなることがある

調整すると関連は小さくなる、と考える方は多いでしょう。しかし逆に動くこともあります(負の交絡と呼ばれることがあります)。MASS::birthwt(Hosmer & Lemeshow, 1989)には、1986年にマサチューセッツ州スプリングフィールドのBaystate Medical Centerで収集された189件の出生が収録されており、低出生体重児(2.5 kg未満)は59人です。「妊娠中の喫煙は低出生体重と関連するか。その関連は調整によってどう変わるか」を調べます。

# R 4.3.3, MASS 7.3-60.0.1, stats::glm; Wald 95% CI via confint.default
library(MASS)
b <- birthwt
b$race  <- factor(b$race,  labels = c("white", "black", "other"))
b$smoke <- factor(b$smoke, labels = c("no", "yes"))
b$ptd   <- as.integer(b$ptl > 0)                  # any previous premature labour

m0 <- glm(low ~ smoke,                                  data = b, family = binomial)  # crude
m1 <- glm(low ~ smoke + race,                           data = b, family = binomial)
m2 <- glm(low ~ smoke + age + lwt + race + ptd + ht + ui, data = b, family = binomial)
tab <- sapply(list(crude = m0, race = m1, all = m2), function(m)
  round(exp(c(OR = unname(coef(m)["smokeyes"]), confint.default(m)["smokeyes", ])), 2))
print(t(tab))
print(round(100 * (tab["OR", ] / tab["OR", "crude"] - 1)))     # % change from crude

出力:

        OR 2.5 % 97.5 %
crude 2.02  1.08   3.78
race  3.05  1.48   6.29
all   2.33  1.05   5.19

crude  race   all
    0    51    15

共変量を1つずつ加えた全過程(同じコードで、1モデルにつき共変量を1つ追加)は、図にまとめました。

喫煙と低出生体重の関連を示すオッズ比と95%信頼区間の比較図。未調整は2.02(1.08〜3.78)、人種を加えると3.05(1.48〜6.29)、全共変量で調整すると2.33(1.05〜5.19)。データはRのMASS::birthwt(n=189)
図2. 低出生体重に対する喫煙の有無のオッズ比。共変量を1つずつ加えて調整したロジスティック回帰による。推定値が10%を超えて動くのは、人種カテゴリ(+51%)と早産歴(−15%)だけで、年齢(−1%)、最終月経時の体重(−3%)、高血圧歴(+1%)、子宮の易刺激性(−3%)はほとんど変えない。6つの共変量すべてで同時に調整すると2.33(95%信頼区間1.05〜5.19)。データ:MASS::birthwt、n = 189、低出生体重児59人、R 4.3.3 © editverse.com

図の読み方:未調整の2.02から、人種カテゴリで調整すると3.05に上がり、6つの共変量すべてで調整すると2.33になります。動きの大きい共変量は人種カテゴリと早産歴の2つだけで、ほかはほとんど動きません。調整後の信頼区間が広がっていることにも注目してください。

一言でいうと:喫煙の未調整オッズ比は2.02でした。記録された人種カテゴリで調整すると3.05に上がり、利用できる6つの共変量すべてで調整すると2.33になり、信頼区間は目に見えて広がりました。

なぜ推定値は上がるのか

喫煙者と非喫煙者では、記録された人種カテゴリの構成が違い、そのカテゴリごとに、もともとのリスクが違います(同じデータから数えた値)。

記録された人種カテゴリ 非喫煙者に占める割合 喫煙者に占める割合 低出生体重(n/全体)
white 38.3% 70.3% 23/96(24.0%)
black 13.9% 13.5% 11/26(42.3%)
other 47.8% 16.2% 25/67(37.3%)

喫煙者の多くは、低出生体重の基準となる割合が最も低いグループにいて、非喫煙者の多くは、割合の高いグループにいます。そのため、未調整の比較では、喫煙の影響に、より低い背景リスクが混ざり、喫煙による差が小さく見積もられます。カテゴリごとに喫煙者と非喫煙者を比べれば、これが取り除かれます。人種カテゴリで層別したMantel–Haenszel解析(mantelhaen.test(table(b$smoke, b$low, b$race), correct = FALSE))では、共通オッズ比が3.09(95%信頼区間1.49〜6.39)となり、回帰の推定値3.05と整合します。

実際の論文で明記しておくべき注意点

  • どの変数を調整してよいかは、専門領域の問題です。今回のデモでは、birthwt のDAGは作っていません。仕組みを示すために、各変数が推定値に与える影響を見せているだけです。データセットの説明では、lwt は「最終月経時の」体重、ptl は「以前の」早産の回数、ht は「高血圧歴」とされており、いずれも曝露の期間より前のものです。ui(「子宮の易刺激性の有無」)についてはタイミングの記載がなく、交絡因子なのか、喫煙からの経路上にあるのかは、数字だけでは決められません。また、記録された人種カテゴリは、1986年のデータにある単なるラベルです。それが何の代わりになっているかは、研究者が論じるべき判断です。
  • 不均一性とサンプルサイズ。人種カテゴリ別の層別オッズ比(white 5.76、black 3.30、other 1.25)は異なりますが、いずれも小さな度数にもとづいています。喫煙と人種の交互作用の尤度比検定はP = 0.21で、イベントが59件では、不均一性があるともないとも言えません。共通オッズ比でまとめる方法は、不均一性がないことを仮定しています。
  • 精度。イベント59件に対し、完全モデルには切片のほかに8つの係数があります(1係数あたり約7イベント)。信頼区間は1.08〜3.78から1.05〜5.19に広がりました。STROBE項目10が述べる、精度の代償です[文献2]。
  • 関連であり、原因の証明ではありません。これは観察データです。調整後のオッズ比は、より適切に制御された比較であって、因果効果の保証ではありません(STROBE項目16a)[文献2]。

6. 論文で交絡をどう報告するか(STROBEの項目)

STROBE声明(von Elm 2007)[文献3]と、その解説文書(Vandenbroucke 2007)[文献2]には、交絡に直接かかわる項目がいくつかあります。チェックリストの全体はSTROBE声明で観察研究を正しく報告する方法で扱っていますので、ここでは交絡に関する項目だけを示します。表中のSTROBEの文言は、解説論文[文献2]の英語を当社が訳したものです。

STROBEの項目 求められること(STROBEの文言) 書く内容
7 変数 「すべてのアウトカム、曝露、予測因子、潜在的な交絡因子、効果修飾因子を明確に定義する」 各共変量とその測定方法を定義する文、または表
12a 統計手法 「交絡の制御に用いたものを含め、すべての統計手法を記述する」 方法(層別化、ロジスティック回帰など)と、バージョン付きのソフトウェア名
14a 記述的データ 「研究参加者の特性…と、曝露および潜在的な交絡因子についての情報を示す」 コホート研究なら曝露群別、症例対照研究なら症例・対照別のTable 1。記述的な表には有意性検定を入れない
16a 主な結果 「未調整の推定値と、該当する場合は交絡因子で調整した推定値、およびその精度(例:95%信頼区間)を示す。どの交絡因子を調整したか、なぜそれらを含めたかを明確にする」 未調整と調整後の推定値と95%信頼区間。共変量の一覧と、その理由
19 限界 「潜在的なバイアスや不精確さの原因を考慮して、研究の限界を論じる。潜在的なバイアスの方向と大きさの両方を論じる」 残余交絡や未測定の交絡、交絡因子の測定誤差、予想される偏りの方向

Methodsの英文テンプレート(バークレーのデータを使用):

We compared admission by sex using logistic regression. Because applicants to different departments have different chances of admission, department was included as a covariate; we also estimated the Mantel–Haenszel common odds ratio stratified by department. Estimates are odds ratios (men vs women) with Wald 95% confidence intervals. Analyses used R version 4.3.3.

和訳:性別による合格を、ロジスティック回帰で比較した。学科によって合格のしやすさが異なるため、学科を共変量に含め、学科で層別したMantel–Haenszel共通オッズ比も推定した。推定値はオッズ比(男性対女性)とWald型95%信頼区間で示した。解析にはRバージョン4.3.3を用いた。

Resultsの英文例(実際の数値):

Of 4,526 applicants, 1,198 of 2,691 men (44.5%) and 557 of 1,835 women (30.4%) were admitted (crude odds ratio, men vs women, 1.84; 95% CI 1.62–2.09). After adjustment for department, the odds ratio was 0.90 (95% CI 0.77–1.06); the Mantel–Haenszel common odds ratio was 0.905 (95% CI 0.772–1.060). Department-specific odds ratios were heterogeneous (likelihood-ratio test for sex-by-department interaction, P = 0.001), mainly because of department A (odds ratio 0.35; 95% CI 0.21–0.58).

和訳:応募者4,526人のうち、男性2,691人中1,198人(44.5%)、女性1,835人中557人(30.4%)が合格した(未調整オッズ比、男性対女性、1.84、95%信頼区間1.62〜2.09)。学科で調整すると、オッズ比は0.90(95%信頼区間0.77〜1.06)で、Mantel–Haenszel共通オッズ比は0.905(95%信頼区間0.772〜1.060)だった。学科別のオッズ比は不均一であり(性別と学科の交互作用の尤度比検定、P = 0.001)、主として学科A(オッズ比0.35、95%信頼区間0.21〜0.58)によるものだった。

Resultsの英文例2(調整の方向を示す例):

Smoking during pregnancy was associated with low birth weight (crude odds ratio 2.02; 95% CI 1.08–3.78). The estimate increased after adjustment for race category (3.05; 95% CI 1.48–6.29), and was 2.33 (95% CI 1.05–5.19) after adjustment for maternal age, weight at last menstrual period, race category, previous premature labour, history of hypertension and uterine irritability.

和訳:妊娠中の喫煙は低出生体重と関連していた(未調整オッズ比2.02、95%信頼区間1.08〜3.78)。人種カテゴリで調整すると推定値は上がり(3.05、95%信頼区間1.48〜6.29)、母親の年齢、最終月経時の体重、人種カテゴリ、早産歴、高血圧歴、子宮の易刺激性で調整すると2.33(95%信頼区間1.05〜5.19)だった。

Limitationsの英文テンプレート:

Adjusted estimates may still be affected by residual confounding from unmeasured or imperfectly measured variables (for example …), and the direction of this bias is likely to be … because …

和訳:調整後の推定値は、未測定または不完全にしか測定されていない変数(たとえば…)による残余交絡の影響を受けている可能性があり、この偏りの方向は、…という理由から…である可能性が高い。(…の部分は、ご自身の専門領域の推論から埋めてください。STROBEは、方向と大きさの両方を求めています。)

モデルのすべての係数を解釈しないでください。WestreichとGreenland(2013)は、1つの多変量モデルから得た曝露と共変量の係数を、すべて効果推定値であるかのように示すことを「Table 2の誤謬」と呼んでいます。共変量の推定値は、「主要曝露の効果推定値が交絡されていなくても、交絡されている可能性がある」うえ、直接効果と総効果が混ざると、誤った解釈を招きます[文献9]。設計の目的としたモデルの曝露推定値を報告し、共変量の係数は、そのためにモデルを組んだ場合だけ解釈してください。

7. 査読者からのよくあるコメントと、よい回答に含まれるもの

査読者のコメント(要旨) 説得力のある回答に含まれるもの
「交絡は考慮されたのか」 方法の名称、共変量の一覧、未調整と調整後の推定値(項目12a、16a)
「なぜこれらの共変量を選んだのか」 因果の推論の根拠(DAG、または事前に規定した一覧)。「単変量解析で有意だった」ではない
「曝露後の変数で調整している」 それが媒介変数かどうかの説明。媒介変数なら、調整を正当化するか、それを除いたモデルを併せて示す
「未測定の交絡はないのか」 候補、予想される方向、可能であれば感度分析(項目12e)
「イベント数に対して変数が多すぎる」 イベント数を報告し、事前規定のより小さな集合を検討し、感度分析を示す

査読者の統計コメント全般への対応は、査読で統計を指摘されたらをご覧ください。交絡以外のよくある誤りは、統計エラー10選で紹介しています。

8. Editverse Japanがお手伝いできること

調整した解析を、第三者の目で確認したい方へ

査読者から交絡について尋ねられた、あるいは調整の方針をどう書けばよいか迷っている場合は、Editverse Japanの医学統計解析サポートが、研究デザインに合った解析方法の検討、多変量解析、結果の解釈、MethodsとResultsの文章まで、研究者の方と一緒に進めます。解析コードと結果レポートを納品し、R・Stata・SPSS・SASに、投稿先ジャーナルの要件に合わせて対応します。採択まで追加料金なしでサポートを継続します(採否はジャーナルの編集者・査読者が判断し、採択を保証するものではありません)。研究デザイン、どの変数を交絡因子とみなすか、原稿の最終的な内容に関する判断は、著者であるあなたに帰属します(ICMJE・COPE準拠)。

解析はすでに終わっていて、STROBEが求める形で原稿に報告できているかを確認したい場合は、報告ガイドライン準拠確認が、原稿をチェックリストの項目ごとに照合し、記入済みのチェックリストをお返しします。

統計関連サービスの全体は、統計解析サービスのページでご覧いただけます。

まとめ

  • 交絡因子は、曝露とアウトカムの両方に関連し、関連を大きくも、小さくも、さらには逆向きにも見せることがあります。バークレーのデータでは、オッズ比1.84の関連が、学科内で比べるともう見られなくなり(0.90)、出生体重のデータでは、2.02の関連が、人種カテゴリで調整すると上がりました(3.05)。
  • すべての変数を調整すべきではありません。交絡因子、媒介変数、コライダー、操作変数は扱いが異なり、選択の根拠はP値ではなく因果の推論です。
  • 未調整と調整後の推定値、方法、共変量、それぞれの理由(STROBE 12a、16a)を報告し、残余交絡を認めます(項目19)。
  • 調整は精度を下げます。イベント数がモデルを支えられるかを確認してください。

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よくある質問

Q. 交絡因子とは、ひと言でいうと何ですか?

曝露とアウトカムの両方に関連する因子で、両者の素の関連に、曝露そのものの効果だけでなく、その因子の影響も混ざってしまうものです。STROBEは、交絡を「事実としては正しい関連を生むが、背景にある、考慮されていない何らかの因子が曝露とアウトカムの両方に関連しているため、因果的には解釈できない」ものと説明しています。

Q. 多変量モデルで交絡因子を調整すれば、関連は因果だと言えますか?

自動的には言えません。STROBEは、交絡因子で調整した解析が関連の「因果的な部分」を確立したと、読者は思い込むべきではないと述べています。結果は、残余交絡、偶然の標本誤差、選択バイアス、情報バイアスによって、なお歪みうるためです。調整後の推定値は、より適切に制御された比較であり、結論は調整変数の集合の背後にある仮定に依存します。

Q. 交絡因子をP値で選んでもよいですか(たとえば単変量解析でP値が0.05未満のもの)?

お勧めしません。STROBEは、P値は交絡因子を選ぶ適切な基準ではなく、著者らは統計的有意性の検定だけに基づいて交絡因子を選ぶことを勧めない、としています。選択は、事前の因果の推論(たとえばDAG)にもとづくべきで、変化量基準を使う場合は、その閾値を報告します。

Q. 測定した変数はすべて調整すべきですか?

いいえ。総効果を知りたいときに、曝露からアウトカムへの因果経路上にある変数を調整するとバイアスを生じることがあり、コライダーを調整するとバイアスの経路を開くことがあります。VanderWeeleは、曝露やアウトカムの原因を調整し、操作変数を除き、未測定の共通原因の代理変数を含めることを勧めています。

Q. 交絡について、MethodsとResultsには何を書けばよいですか?

Methodsには、制御の方法と共変量、それぞれを含めた理由を書きます(STROBE 12a)。Resultsには、未調整と調整後の推定値を95%信頼区間つきで示します(16a)。Discussionには、残余交絡と未測定の交絡を、予想される方向と大きさとともに書きます(19)。

参考資料

PubMed収載の文献(各文献の書誌情報は2026年10月6日にNCBI E-utilitiesのesummaryで確認)

  1. Bickel PJ, Hammel EA, O’Connell JW. Sex bias in graduate admissions: data from Berkeley. Science. 1975;187(4175):398-404. doi: 10.1126/science.187.4175.398. PMID: 17835295.(抄録を確認)
  2. Vandenbroucke JP, von Elm E, Altman DG, Gøtzsche PC, Mulrow CD, Pocock SJ, Poole C, Schlesselman JJ, Egger M; STROBE Initiative. Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology (STROBE): explanation and elaboration. PLoS Med. 2007;4(10):e297. doi: 10.1371/journal.pmed.0040297. PMID: 17941715. PMCID: PMC2020496(全文を確認。Epidemiology 2007;18(6):805-35にも掲載、PMID: 18049195、doi: 10.1097/EDE.0b013e3181577511)。
  3. von Elm E, Altman DG, Egger M, Pocock SJ, Gøtzsche PC, Vandenbroucke JP; STROBE Initiative. The Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology (STROBE) statement: guidelines for reporting observational studies. Lancet. 2007;370(9596):1453-7. doi: 10.1016/S0140-6736(07)61602-X. PMID: 18064739.(書誌情報のみ確認。本文の文言は引用していません)
  4. VanderWeele TJ. Principles of confounder selection. Eur J Epidemiol. 2019;34(3):211-219. doi: 10.1007/s10654-019-00494-6. PMID: 30840181. PMCID: PMC6447501(全文を確認)。
  5. Hernán MA, Hernández-Díaz S, Werler MM, Mitchell AA. Causal knowledge as a prerequisite for confounding evaluation: an application to birth defects epidemiology. Am J Epidemiol. 2002;155(2):176-84. doi: 10.1093/aje/155.2.176. PMID: 11790682.(抄録を確認)
  6. Mickey RM, Greenland S. The impact of confounder selection criteria on effect estimation. Am J Epidemiol. 1989;129(1):125-37. doi: 10.1093/oxfordjournals.aje.a115101. PMID: 2910056.(抄録を確認)
  7. Sun GW, Shook TL, Kay GL. Inappropriate use of bivariable analysis to screen risk factors for use in multivariable analysis. J Clin Epidemiol. 1996;49(8):907-16. doi: 10.1016/0895-4356(96)00025-x. PMID: 8699212.(抄録を確認)
  8. Tennant PWG, Murray EJ, Arnold KF, Berrie L, Fox MP, Gadd SC, et al. Use of directed acyclic graphs (DAGs) to identify confounders in applied health research: review and recommendations. Int J Epidemiol. 2021;50(2):620-632. doi: 10.1093/ije/dyaa213. PMID: 33330936.(抄録を確認)
  9. Westreich D, Greenland S. The table 2 fallacy: presenting and interpreting confounder and modifier coefficients. Am J Epidemiol. 2013;177(4):292-8. doi: 10.1093/aje/kws412. PMID: 23371353.(抄録を確認)
  10. Greenland S, Pearl J, Robins JM. Causal diagrams for epidemiologic research. Epidemiology. 1999;10(1):37-48. PMID: 9888278.(抄録を確認。PubMedにDOIの記載なし。「因果ダイアグラムは、制御すべき変数を特定する出発点になる」という背景説明にのみ使用)
  11. Greenland S, Morgenstern H. Confounding in health research. Annu Rev Public Health. 2001;22:189-212. doi: 10.1146/annurev.publhealth.22.1.189. PMID: 11274518.(背景として抄録のみ確認。数値や引用は使用していません)

ガイドライン・ソフトウェア・データ

  • R Core Team. R 4.3.3。datasets::UCBAdmissions のヘルプ(1973年、応募者の多い6学科、応募者4,526人。Bickelら 1975を引用)。stats::mantelhaen.test と stats::glm のヘルプ。
  • Venables WN, Ripley BD. MASS 7.3-60.0.1。MASS::birthwt(出典:Hosmer DW, Lemeshow S. Applied Logistic Regression. Wiley; 1989。データはマサチューセッツ州スプリングフィールドのBaystate Medical Centerで1986年に収集)。
  • STROBEチェックリスト:STROBE Statement、EQUATOR Network: STROBE(本記事の作成時には開いていません。ガイドラインの公式な所在として掲載しています。本文のSTROBEの文言は、PLoS Medの解説論文[文献2]の本文からの引用です)。

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