回帰分析の種類と選び方|結果変数で決めるモデル選択と論文記載例
回帰分析のモデルは、ソフトウェアのメニューではなく、測定した結果変数(アウトカム)の型で選びます。連続値(体重減少、血圧など)なら線形回帰、一定時点での二値(あり・なし)ならロジスティック回帰、観察人年あたりの件数・発生率ならポアソン回帰、打ち切りを伴うイベントまでの時間(生存時間)ならCox回帰です。モデルごとに報告する効果指標は異なり(平均差、オッズ比、発生率比、ハザード比)、論文では、報告ガイドラインに沿って、指標の名称、95%信頼区間、そしてモデルの仮定を確認したことを明記することが推奨されます。本記事では、同じ患者データに4つのモデルをすべて当てはめ、モデルの選択が報告する数値をどう変えるかを示します。
本記事は、回帰分析の全体像と選び方の入口です。検定の選択は統計検定の選び方、仮定の確認は統計的仮定の確認、効果量は効果量の計算で扱っています。ここではモデルごとに要点を絞り、詳細は各記事に譲ります。
結果変数の型とデザインで回帰モデルを選ぶ
回帰分析は、1つの結果変数(従属変数)と、1つ以上の説明変数(独立変数、予測因子、共変量)との関係をモデル化する方法です[1][2]。説明変数が複数ある場合、各係数は「他の変数を一定としたときの、その変数と結果変数との関連」を表します[1]。次の表が選択の地図で、図1の左側も同じ地図を描いています。
| 測定した結果変数 | 例 | モデル | 報告する効果指標 | 効果なしの基準値 |
|---|---|---|---|---|
| 連続値 | 体重減少(lb)、血圧 | 線形回帰(linear regression) | 1単位あたりの平均差(回帰係数) | 0 |
| 一定時点での二値 | 1年以内の死亡の有無 | ロジスティック回帰(logistic regression) | オッズ比 | 1 |
| 観察人年を伴う件数・発生率 | 人年あたりの死亡数 | 観察人年の対数をオフセットとするポアソン回帰(Poisson regression) | 発生率比(rate ratio) | 1 |
| 打ち切りを伴うイベントまでの時間 | 全生存期間 | Cox比例ハザード回帰(Cox regression) | ハザード比 | 1 |
次の3つの問いで、ほとんどの選択は決まります。
- 結果変数の型は何か。連続値、二値、件数・発生率、イベントまでの時間のいずれかです。
- 全員が同じ長さだけ追跡されているか。打ち切りはあるか。追跡期間が異なる、または打ち切りがある場合、一定時点の二値の結果変数にすると情報が失われます(失われる患者数は後述の実例で示します)。生存時間解析が必要になるのは、研究終了時までに全員でイベントが起こっているとは限らないためです[3]。
- 観察は互いに独立か。本記事の4つのモデルはいずれも、観察の独立性を仮定します。同じ人への反復測定や、病院内でまとまった(クラスター化した)患者には、混合効果モデルなど別の方法が必要です[1][2]。これは別のテーマです。
もう1点は、解析ではなくプロトコルの段階で決めておくことです。共変量は、結果を見る前に、研究疑問と交絡(関心のある関係を歪める変数)に基づいて決めます。重要な変数を除くと推定にバイアスが生じ得る一方、変数を入れすぎるとノイズまでモデル化してしまい、精度が下がります[1]。
4つの回帰モデルと仮定の早見表
線形回帰。説明変数と連続値の結果変数との直線的な関係を当てはめます。係数は、連続変数の説明変数が1単位増えたときの結果変数の平均的な変化、カテゴリ変数なら基準カテゴリとの期待される差です。R²(決定係数)は、説明変数で説明される結果変数のばらつきの割合です[1]。仮定は、モデルが正しく特定されていること、観察が独立であること、そして残差がおおむね正規分布し、予測値の範囲全体でばらつき(分散)がほぼ一定であることです[1]。2標本のt検定と分散分析は、線形回帰の特殊な場合です[1]。
ロジスティック回帰。二値の結果変数をモデル化します。説明変数と、結果のロジット(オッズの自然対数)との間に線形関係を仮定することで、予測確率が0から1の間に収まります。係数を指数変換した e^b をオッズ比として読みます[2]。仮定は、連続変数の説明変数がロジット尺度で線形であること、観察が独立であること、モデルが正しく特定されていることです。予測性能は、較正(calibration)と識別能(ROC曲線下面積)で表します[2]。ここでは選び方と、後述するオッズ比の注意点に絞ります。
ポアソン回帰。件数、または曝露量あたりの件数をモデル化します。発生率を扱うときは、観察人年(person-time)の対数をオフセット(係数を1に固定した説明変数)としてモデルに入れ、e^b を発生率比として読みます。通常のポアソンモデルは、個々の件数が一般にモデルの想定よりもばらつく(過分散、overdispersion)ため、厳しい前提が満たされない限り誤解を招くおそれがあります[5]。標準的な対処は、負の二項回帰、または過分散を補正したポアソンモデルです[5]。生存データに、曝露の対数をオフセットとするポアソンモデルを当てはめることは、ハザードが時間を通じて一定であると仮定することに相当します。その場合、指数生存モデルとポアソン回帰モデルは互換的に使え、区分指数モデル(各時間区間の中ではハザードが一定)はポアソン回帰と等価です[6]。
Cox回帰。医学研究で、イベントまでの時間を結果とするときの標準的な方法です。ハザード(瞬間的なイベント発生率)を h(t) = h0(t) × exp(b1x1 + … + bpxp) とモデル化し、ベースラインハザード h0(t) の形は特定しません[3]。exp(b) がハザード比で、1より大きければイベント発生率が高い、つまり生存期間が短いことを意味します[3]。鍵となる仮定は比例ハザード性です。あるグループのハザードは、他のどのグループのハザードの定数倍であり、したがってハザード曲線は交差しません[3]。標準的な扱いでは、生存時間が互いに独立であること、そして情報を持たない(非情報的な)右側打ち切りであることも仮定します[3]。比例ハザード性は、Schoenfeld残差や、共変量と時間の交互作用項などで、図と数値の両面から検討でき、満たされない場合には結論が誤解を招くことがあります[4]。
仮定と、論文のMethodsで名前を挙げる確認を、モデル別に一覧にします。
| モデル | 効果指標の呼び方 | 主な仮定 | Methodsで名前を挙げる確認 |
|---|---|---|---|
| 線形回帰 | 平均差(回帰係数) | モデルの特定、観察の独立、残差の正規性と等分散性 | 残差 |
| ロジスティック回帰 | オッズ比 | ロジット尺度での線形性、観察の独立、モデルの特定 | ロジット尺度での線形性 |
| ポアソン回帰 | 発生率比 | 観察の独立、過分散がないこと(生存データに用いる場合はハザード一定) | 分散(過分散) |
| Cox回帰 | ハザード比 | 比例ハザード性、生存時間の独立、非情報的な右側打ち切り | 比例ハザード性 |
4つのモデルすべてに共通する仮定は、観察の独立性です。
実例:同じ実データに4つのモデルを当てはめる
データ。survival::lung、North Central Cancer Treatment Group(NCCTG)の進行肺がんデータです(228例。Rのドキュメントによる。出典はLoprinzi et al. 1994)[11][14]。データセットでは、status は 1 = 打ち切り、2 = 死亡、sex は 1 = 男性、2 = 女性、ph.ecog は医師が評価したECOGパフォーマンスステータス(PS。0 = 無症状から 4 = 臥床。観察された範囲は 0~3)、wt.loss は直近6か月の体重減少(ポンド)です。使用する変数(年齢、性別、ECOG PS、体重減少、生存時間、status)にすべて欠測のない213例を解析しました。213例の死亡は151件で、Kaplan-Meier法による生存期間の中央値は337日(95%信頼区間 288~371)でした。すべてのモデルの説明変数は、年齢(10歳あたり)、性別(女性 vs 男性)、ECOG PS(1点あたり。1点ごとに線形の効果を仮定しており、これは1つの仮定です。スコア3の患者は1人だけです)です。
これは、モデルの選び方と報告のしかたを示す教材用の例であり、臨床的な結論ではありません。ECOG PSは臨床医による評価であり、以下の関連は因果効果の推定値ではありません。
結果変数。線形:体重減少(lb)。ロジスティック:1年(365日)以内の死亡。ポアソン:死亡(患者ごとに0/1)、オフセットは追跡年数の対数。Cox:打ち切りを伴う死亡までの時間。
library(survival) # R 4.3.3, survival 3.8.6
lung2 <- na.omit(lung[, c("time","status","age","sex","ph.ecog","wt.loss")])
lung2$age10 <- lung2$age / 10
lung2$female <- as.integer(lung2$sex == 2)
lung2$dead <- as.integer(lung2$status == 2)
lung2$years <- lung2$time / 365.25
# death within 1 year: 1 = died by day 365, 0 = followed beyond day 365,
# NA = censored before day 365 (outcome unknown, excluded from this model)
lung2$death1y <- ifelse(lung2$dead == 1 & lung2$time <= 365, 1L,
ifelse(lung2$time >= 365, 0L, NA))
m_lin <- lm(wt.loss ~ age10 + female + ph.ecog, data = lung2)
m_log <- glm(death1y ~ age10 + female + ph.ecog, data = lung2, family = binomial)
m_poi <- glm(dead ~ age10 + female + ph.ecog + offset(log(years)),
data = lung2, family = poisson)
m_cox <- coxph(Surv(time, status) ~ age10 + female + ph.ecog, data = lung2)
cox.zph(m_cox) # proportional-hazards check (Schoenfeld residuals)
実際の出力です(推定値と95%信頼区間。比は係数を指数変換した値です。信頼区間は、glmではconfint()によるプロファイル尤度法、coxphはWald法、lmはt分布に基づきます)。
Linear (lm): mean difference in weight loss, lb
est 2.5 % 97.5 %
age10 -0.24 -2.19 1.72
female -3.25 -6.82 0.31
ph.ecog 3.45 0.96 5.93
Logistic (glm, binomial): odds ratio, death within 1 year (n = 172)
est 2.5 % 97.5 %
age10 1.03 0.71 1.49
female 0.44 0.22 0.85
ph.ecog 2.09 1.31 3.42
Poisson (glm, offset(log(years))): rate ratio (n = 213, 151 deaths)
est 2.5 % 97.5 %
age10 1.13 0.94 1.37
female 0.59 0.42 0.83
ph.ecog 1.49 1.18 1.87
Cox (coxph): hazard ratio (n = 213, 151 deaths)
est 2.5 % 97.5 %
age10 1.14 0.95 1.38
female 0.56 0.40 0.79
ph.ecog 1.58 1.25 1.99
cox.zph: age10 p = 0.50 | female p = 0.13 | ph.ecog p = 0.16 | GLOBAL p = 0.21

図の読み方:結果変数の型によって、モデル、効果指標、そして実際に解析される標本が変わります。追跡時間を直接扱う2つのモデル(オフセット付きポアソン、Cox)は本例では近い値になり(ECOG PS:発生率比 1.49、ハザード比 1.58)、一定時点のロジスティックモデルは、より少ない患者数から、より大きく見えるオッズ比(2.09。これは別の指標です。後述の(c)を参照)を与えています。
出力の読み方
- 線形。ECOG PSが1点高いと、体重減少は3.45 lb大きい関連がありました(95%信頼区間 0.96~5.93、p = 0.007)。R² = 0.05 で、3つの変数が説明する体重減少のばらつきは約5%です。
- ロジスティック。ECOG PSが1点高いと、1年以内に死亡するオッズは2.09倍でした(95%信頼区間 1.31~3.42)。女性のオッズは男性の0.44倍でした(0.22~0.85)。
- ポアソン。発生率比は、ECOG PS 1点あたり 1.49(1.18~1.87)、女性で 0.59(0.42~0.83)でした。全体の死亡率は、観察人年183.8に対して死亡151件、すなわち約0.82件/人年でした。
- Cox。ハザード比は、ECOG PS 1点あたり 1.58(1.25~1.99、p < 0.001)、女性で 0.56(0.40~0.79、p = 0.001)でした。年齢との関連は明確ではありませんでした(10歳あたり 1.14、0.95~1.38、p = 0.17)。Schoenfeld残差の検定は、比例ハザード性を棄却しませんでした(全体のp = 0.21)。
論文のResults記載例
以下の各文は、モデル、単位、調整した変数、信頼区間を明示しています。ご自身のデータに合わせて書き換え、数値はそのまま流用しないでください。英語論文向けの記載例を示し、それぞれに和訳を添えます。
Methods (statistics). Associations of age, sex and ECOG performance score with outcome were estimated by multivariable regression chosen by outcome type: linear regression for weight loss, logistic regression for death within one year, Poisson regression with a log follow-up-time offset for the death rate, and Cox proportional hazards regression for overall survival. Proportional hazards were assessed with Schoenfeld residuals. Estimates are reported with 95% confidence intervals. Analyses used R 4.3.3 (survival 3.8.6).
(和訳)年齢、性別、ECOGパフォーマンスステータスと結果との関連を、結果変数の型に応じて選んだ多変量回帰で推定した。体重減少には線形回帰、1年以内の死亡にはロジスティック回帰、死亡率には追跡時間の対数をオフセットとするポアソン回帰、全生存期間にはCox比例ハザード回帰を用いた。比例ハザード性はSchoenfeld残差で評価した。推定値は95%信頼区間とともに示す。解析にはR 4.3.3(survival 3.8.6)を用いた。
Results (Cox). Of 213 patients with complete data, 151 died; median overall survival was 337 days (95% CI 288 to 371). In the multivariable Cox model, a higher ECOG score (hazard ratio 1.58 per point, 95% CI 1.25 to 1.99; p < 0.001) and male sex (hazard ratio for women 0.56, 95% CI 0.40 to 0.79; p = 0.001) were associated with shorter survival, whereas there was no clear association with age (hazard ratio 1.14 per 10 years, 95% CI 0.95 to 1.38; p = 0.17). There was no evidence against proportional hazards (global test p = 0.21).
(和訳)欠測のない213例のうち151例が死亡し、全生存期間の中央値は337日(95%信頼区間 288~371)であった。多変量Cox回帰では、ECOGスコアが高いこと(1点あたりのハザード比 1.58、95%信頼区間 1.25~1.99、p < 0.001)と男性(女性のハザード比 0.56、95%信頼区間 0.40~0.79、p = 0.001)が、より短い生存期間と関連したが、年齢との明確な関連は認められなかった(10歳あたりのハザード比 1.14、95%信頼区間 0.95~1.38、p = 0.17)。比例ハザード性に反する証拠は認められなかった(全体の検定 p = 0.21)。
Results (linear). Each 1-point higher ECOG score was associated with 3.45 lb greater weight loss over six months (95% CI 0.96 to 5.93) after adjustment for age and sex.
(和訳)ECOGスコアが1点高いごとに、年齢と性別で調整後、6か月間の体重減少が3.45 lb大きい関連が認められた(95%信頼区間 0.96~5.93)。
Results (logistic). Among 172 patients with known one-year status, each 1-point higher ECOG score was associated with higher odds of death within one year (adjusted odds ratio 2.09, 95% CI 1.31 to 3.42).
(和訳)1年時点の状態が判明している172例において、ECOGスコアが1点高いごとに、1年以内に死亡するオッズが高い関連が認められた(調整オッズ比 2.09、95%信頼区間 1.31~3.42)。
実例から分かる4つのこと
(a) 仮定を確認し、確認した結果を報告する。線形モデルの残差は明らかに右に歪んでおり(本データではShapiro-Wilk検定 p < 0.001、歪度 1.14。歪度はe1071::skewness()の既定値)、線形回帰が仮定する「おおむね正規分布する残差」[1]から外れています。そこでECOG PSの係数を、不均一分散に頑健(HC3)な標準誤差(95%信頼区間 1.13~5.77)と、2,000回のノンパラメトリック・ブートストラップ(95%パーセンタイル区間 1.32~5.72)で再推定しました。ECOG PSについての結論は変わりませんでした。実際の論文では、残差プロットの確認に加え、変換や別のモデルも検討し、どの確認を行ったかをMethodsに明記します。ここで体重減少を使ったのは、連続値であり、しかも臨床医による能力評価そのものではないからです。もう一つの候補である食事での摂取カロリー(meal.cal)は、228例中47例で欠測しており、同じ3つの説明変数を入れたモデル(解析可能な180例)での残差の歪度も1.03と同様に歪んでいました。つまり、どちらも「きれいな」線形回帰の結果変数ではありません。実データではよくあることで、だからこそ確認の結果を論文に書く必要があります。
以下が、この確認のコードです(ブートストラップは乱数の種に依存するため、区間はset.seed(1)での値です。種を変えると区間の端は少し動きます)。
library(sandwich); library(e1071) # sandwich 3.1.1
shapiro.test(resid(m_lin))$p.value # 6.4e-09
skewness(resid(m_lin)) # 1.14 (type 3, e1071 default)
V <- vcovHC(m_lin, type = "HC3"); se <- sqrt(V["ph.ecog", "ph.ecog"])
round(coef(m_lin)["ph.ecog"] + c(-1, 1) * qt(.975, m_lin$df.residual) * se, 2) # 1.13 5.77
set.seed(1)
bs <- replicate(2000, coef(lm(wt.loss ~ age10 + female + ph.ecog,
data = lung2[sample(nrow(lung2), replace = TRUE), ]))["ph.ecog"])
round(quantile(bs, c(.025, .975)), 2) # 1.32 5.72
(b) 追跡期間を、安易に二値化しない。ロジスティックモデルで使えたのは、213例中172例だけでした。41例が365日より前に打ち切られており、1年時点の状態が不明だからです。172例の内訳は、死亡108例と、365日を超えて追跡された64例です。Cox回帰は213例すべてと、151件の死亡すべてを使います。打ち切りがあるからこそ生存時間解析が必要になるのであり[3]、追跡期間がまちまちで打ち切りがある場合は、一般に、イベントまでの時間を扱う生存時間モデル(time-to-eventモデル)が適切な選択です。一定時点のロジスティックモデルが適切なのは、結果が本当にその時点での二値であり(例:院内合併症)、全員が全期間にわたって観察されている場合です。なお、打ち切られた41例を除くことは、情報を失うだけでなく、推定にバイアスを生じさせる可能性もあります。
(c) アウトカムの頻度が高いとき、オッズ比はリスク比とは別物になる。オッズ比は常に、リスク比より1から遠い値になります(有害な効果ならリスク比より大きく、保護的な効果なら小さくなります)。この過大評価は、結果の発生率、曝露の効果の強さ、交絡の大きさとともに大きくなります[7]。本データでは、172例の62.8%が1年以内に死亡しています。ECOG PSのロジスティックのオッズ比は2.09、女性は0.44で、どちらもより1から遠い値です。一方、二値の結果に対する修正ポアソン法(ロバスト(sandwich)分散を用いたポアソンモデル)[8][7]で求めたリスク比は、ECOG PS 1点あたり 1.28(95%信頼区間 1.09~1.49)、女性で 0.74(0.57~0.96)です。コホート研究や試験でアウトカムの頻度が高い場合は、リスク比(対数二項回帰、収束しなければロバスト標準誤差つきのポアソン回帰)を報告します[7]。オッズ比を報告する場合は、オッズとして記述し、「リスクが何倍」とは書かないでください。
library(sandwich) # sandwich 3.1.1
m_rr <- glm(death1y ~ age10 + female + ph.ecog, data = lung2, family = poisson)
b <- coef(m_rr); se <- sqrt(diag(vcovHC(m_rr, type = "HC0")))
round(exp(cbind(RR = b, lower = b - 1.96*se, upper = b + 1.96*se))[-1, ], 2)
# RR lower upper
# age10 1.01 0.89 1.15
# female 0.74 0.57 0.96
# ph.ecog 1.28 1.09 1.49
(d) ポアソンとCoxは近い値になり得て、ここでも近い値になった。ポアソンの発生率比(1.49、0.59、1.13)は、Coxのハザード比(1.58、0.56、1.14)に近い値です。両モデルは関連しています。オフセット付きのポアソン回帰はハザードが時間を通じて一定であると仮定し、Cox回帰はベースラインハザードの形を特定しません[3][6]。本データでハザードが一定かどうかは検定しておらず、また本例のポアソンモデルは患者ごとの0/1の死亡を結果としているため過分散の検討も行っていません。ここでの一致は一つの観察であり、保証ではありません。Cox回帰は一定ハザードの仮定を必要としないため、生存データでは、より安全な既定の選択です。ポアソン回帰(オフセット付き)は、データが本当に件数や発生率のとき(カテーテル1,000日あたりの感染数、患者1人年あたりの入院数など)に使います。件数のばらつきがポアソンモデルの想定より大きい場合は、負の二項回帰か、過分散を補正したモデルに切り替えます[5]。
論文に書くときの要点(効果指標・変数の数・チェックリスト)
効果指標の書き方と報告ガイドライン
モデルを選ぶことは、書く文を選ぶことでもあります。
- 線形:「平均差 X 単位(95%信頼区間 a~b)」。単位を明記します。
- ロジスティック:「調整オッズ比 X(95%信頼区間 a~b)」。オッズは確率ではありません。前節の(c)を参照してください。
- ポアソン:「調整発生率比 X(95%信頼区間 a~b)」。人年の単位(患者1人年あたり)を併記します。
- Cox:「調整ハザード比 X(95%信頼区間 a~b)」。時間の起点、イベントの定義、打ち切りの規則を併記します。
ICMJEの勧告は、元データにアクセスできる知識のある読者が、その妥当性を判断し、報告された結果を検証できる程度に、統計手法を詳しく記述すること、P値のみに頼らないこと、信頼区間と、使用したソフトウェアとそのバージョンを示すことを求めています[12]。回帰分析についてのSAMPLガイドラインはさらに、次の点を求めています。解析の目的を記述する。変数を特定し、それぞれを要約する。仮定が満たされていたことを確認する。欠測データの扱いを報告する。回帰係数を信頼区間とP値とともに報告する。適合度の指標(重回帰ではR²)を示す。モデルを検証したか、どのように検証したかを明記する。統計ソフトウェアを明記する[10][13]。観察研究では、STROBEのチェックリストにも従ってください(STROBE解説)。数値の示し方は、統計解析結果の報告方法と信頼区間の解釈もご覧ください。
モデルに入れられる変数の数
ロジスティックモデルやCoxモデルでは、「予測変数1つにつき、少なくとも10件のイベント」という古い経験則があります。大規模なシミュレーション研究では、この経験則は保守的すぎる可能性があり、10件未満でも信頼区間の被覆率とバイアスが許容範囲となる状況があること、変数あたりのイベント数と同程度か、それ以上に影響する他の要因もあることが示されました[9]。これを、小さな標本に大きなモデルを当てはめてよいという許可と読んではいけません。本例では、ロジスティックモデルの少ない方の結果群は64例で、予測変数は3つです(予測変数あたり約21例)。Coxモデルは151件のイベントに対して予測変数3つです(予測変数あたり約50件)。イベントが30件しかないのに12個の予測変数を入れたい場合は、解析の前に統計の専門家に相談してください。これを決める場は、査読対応の段階ではなく、プロトコルとサンプルサイズ設計(サンプルサイズと検出力分析)です。
あわせて読みたい:何個まで入れてよいか:説明変数の選び方と過剰適合
Methodsを書く前のチェックリスト
- 結果変数の型、時間の起点、イベントの定義を書き出した(連続値/一定時点の二値/曝露を伴う件数/イベントまでの時間)。
- 観察の独立性を検討した(反復測定やクラスターには別のモデルが必要)。
- 共変量を、結果を見る前に、理由(交絡、先行文献)を添えて決めた。
- 仮定の確認をMethodsに明記した:残差(線形)、ロジット尺度での線形性(ロジスティック)、分散・過分散(ポアソン)、比例ハザード性(Cox)。
- 欠測データの扱いを明記し、モデルごとに解析した患者数を報告した。
- 効果指標を正しく呼び(平均差、オッズ比、発生率比、ハザード比)、95%信頼区間と単位を併記した。
- ソフトウェアとそのバージョンを明記した。
これらは査読で問われることのある点です。指摘のされ方と答え方は、査読で統計を指摘されたらと統計エラー10選をご覧ください。
モデルを選ぶのは研究者自身です。解析を正しく実施し、正しく報告する段階で、サポートがお役に立ちます。
Editverse Japanの「医学統計解析サポート」は、研究デザインとデータを起点に、デザインに適した統計手法のご提案(多変量のロジスティック回帰・Cox回帰を含む)、R・Stata・SPSS・SAS等による解析、解析コードと結果レポートの納品、論文のMethods・Results執筆のサポートに対応しています。論文の最終的な内容と投稿の判断は、著者であるあなたに帰属します。1原稿あたり、採択まで追加料金なしでサポートを継続します(採否はジャーナルが判断します。研究デザインまたは解析対象のデータセットが変更された場合は、別途お見積もりとなります)。
解析結果から論文原稿の執筆までまとめて必要な場合は、「データから論文へ」をご覧ください。研究の着想、データの解釈、結論の決定は著者が行います。
解析を依頼する前に、医学統計解析の外注|依頼前の準備と納品物・著者資格で、準備するものと、統計支援と著者資格の関係をご確認いただけます。
まとめ
- モデルは結果変数の型で選びます:連続値(線形)、一定時点の二値(ロジスティック)、観察人年を伴う件数・発生率(オフセット付きポアソン)、打ち切りを伴うイベントまでの時間(Cox)。
- モデルが効果指標を決めます:平均差、オッズ比、発生率比、ハザード比。95%信頼区間、単位、調整した変数とともに、正しく呼んでください。
- 仮定を確認し、確認した結果を報告します:残差、ロジット尺度での線形性、過分散、比例ハザード性、観察の独立性。
- 同じ213例で、CoxとポアソンはECOG PSについて近い値(ハザード比 1.58、発生率比 1.49)を示しました。一定時点のロジスティックモデルは172例しか使えず、オッズ比は2.09でした。アウトカムの頻度が高かったため、同じデータから求めたリスク比は1.28でした。
- 共変量とサンプルサイズは設計の段階で決め、論文化ではICMJE、SAMPL、観察研究ではSTROBEに従ってください。
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よくある質問
Q1. 相関と回帰は何が違いますか。
相関係数は、2つの変数の直線的な関連の強さと向きを要約するもので、2つの変数を対称に扱います。回帰は、結果変数と説明変数を区別し、各説明変数の効果を結果変数の単位(または比)で推定し、他の変数を調整できます[1]。相関係数そのものについては、相関係数とはをご覧ください。
Q2. 重回帰分析とロジスティック回帰分析は、どう使い分けますか。
結果変数で決めます。線形回帰は連続値の結果変数に、ロジスティック回帰は二値(あり・なし)の結果変数に使い、オッズ比を与えます[1][2]。どちらも複数の説明変数を入れられるため、「重(multiple)」は説明変数の数を指しており、別の方法を意味するわけではありません。
Q3. 結果は「あり・なし」ですが、追跡期間がまちまちです。ロジスティック回帰でよいですか。
最適な選択ではないことが多いです。追跡期間が患者ごとに異なる、または打ち切りがある場合は、生存時間モデル(Cox回帰)や、観察人年をオフセットとする発生率モデル(ポアソン回帰)のほうが、一定時点の二値の結果変数では捨ててしまう追跡情報を使えます。本記事の例では、1年時点のロジスティックモデルは、1年より前に打ち切られた213例中41例を除外せざるを得ませんでした。
Q4. アウトカムの発生頻度が高く(まれではなく)、オッズ比を報告してよいか迷っています。
注意が必要です。オッズ比はリスク比より1から遠い値になり(効果を誇張します)、アウトカムの頻度が高いほどその差は大きくなります[7]。コホート研究や試験では、対数二項回帰、またはロバスト標準誤差つきのポアソン回帰によるリスク比を検討してください[8][7]。オッズ比のまま報告する場合は、オッズとして解釈します。
Q5. 回帰モデルには、変数をいくつまで入れられますか。
単一の決まりはありません。ロジスティック回帰とCox回帰の「変数あたり10イベント」という目安は、状況によっては保守的すぎる可能性がありますが、データの他の特徴が同程度かそれ以上に影響することもあります[9]。共変量は設計の段階で決め、イベントが少ない場合は統計の専門家に相談してください。
参考資料
PubMed収載文献(各レコードをNCBI E-utilitiesのesummaryで確認し、PMIDとDOIはPubMedの記載を転記しています)
- Schober P, Vetter TR. Linear Regression in Medical Research. Anesth Analg. 2021 Jan;132(1):108-109. doi:10.1213/ANE.0000000000005206. PMID: 33315608
- Schober P, Vetter TR. Logistic Regression in Medical Research. Anesth Analg. 2021 Feb 1;132(2):365-366. doi:10.1213/ANE.0000000000005247. PMID: 33449558
- Bradburn MJ, Clark TG, Love SB, Altman DG. Survival analysis part II: multivariate data analysis–an introduction to concepts and methods. Br J Cancer. 2003 Aug 4;89(3):431-6. doi:10.1038/sj.bjc.6601119. PMID: 12888808
- Bellera CA, MacGrogan G, Debled M, Tunon de Lara C, Brouste V, Mathoulin-Pélissier S. Variables with time-varying effects and the Cox model: some statistical concepts illustrated with a prognostic factor study in breast cancer. BMC Med Res Methodol. 2010 Mar 16;10:20. doi:10.1186/1471-2288-10-20. PMID: 20233435
- Gardner W, Mulvey EP, Shaw EC. Regression analyses of counts and rates: Poisson, overdispersed Poisson, and negative binomial models. Psychol Bull. 1995 Nov;118(3):392-404. doi:10.1037/0033-2909.118.3.392. PMID: 7501743
- Austin PC. A Tutorial on Multilevel Survival Analysis: Methods, Models and Applications. Int Stat Rev. 2017 Aug;85(2):185-203. doi:10.1111/insr.12214. PMID: 29307954
- Knol MJ, Le Cessie S, Algra A, Vandenbroucke JP, Groenwold RHH. Overestimation of risk ratios by odds ratios in trials and cohort studies: alternatives to logistic regression. CMAJ. 2012 May 15;184(8):895-9. doi:10.1503/cmaj.101715. PMID: 22158397
- Zou G. A modified Poisson regression approach to prospective studies with binary data. Am J Epidemiol. 2004 Apr 1;159(7):702-6. doi:10.1093/aje/kwh090. PMID: 15033648
- Vittinghoff E, McCulloch CE. Relaxing the rule of ten events per variable in logistic and Cox regression. Am J Epidemiol. 2007 Mar 15;165(6):710-8. doi:10.1093/aje/kwk052. PMID: 17182981
- Lang TA, Altman DG. Basic statistical reporting for articles published in biomedical journals: the “Statistical Analyses and Methods in the Published Literature” or the SAMPL Guidelines. Int J Nurs Stud. 2015 Jan;52(1):5-9. doi:10.1016/j.ijnurstu.2014.09.006. PMID: 25441757
- Loprinzi CL, Laurie JA, Wieand HS, Krook JE, Novotny PJ, Kugler JW, et al. Prospective evaluation of prognostic variables from patient-completed questionnaires. North Central Cancer Treatment Group. J Clin Oncol. 1994 Mar;12(3):601-7. doi:10.1200/JCO.1994.12.3.601. PMID: 8120560(データセットの出典。survivalパッケージのドキュメントによる)
機関・ソフトウェアの情報源
- ICMJE. Recommendations for the Conduct, Reporting, Editing, and Publication of Scholarly Work in Medical Journals: Preparing for Submission (Statistics). https://www.icmje.org/recommendations/browse/manuscript-preparation/preparing-for-submission.html
- EQUATOR Network. SAMPL guidelines. https://www.equator-network.org/reporting-guidelines/sampl/
- R documentation, survival::lung(NCCTG肺がんデータ。変数のコーディング). https://stat.ethz.ch/R-manual/R-devel/library/survival/html/lung.html
- R 4.3.3、パッケージ survival 3.8.6、sandwich 3.1.1(本記事の数値をすべて算出したRセッションの報告するバージョン)。